「若手」「Z世代」——紋切り型の世代論はやめませんか?
2025.04.02
目次
多くの企業が、Z世代の獲得と定着に力を入れています。しかし、様々なエンゲージメント施策を実施しているにもかかわらず、期待したほどの効果が出ていないのが現状です。ある調査*1では、Z世代の従業員満足度は他世代と比較して低く、離職率は高いという結果が出ています。ではなぜ、これほどまでに企業とZ世代の間で深い認識の溝が生まれてしまっているのでしょうか?
本記事で指摘したいのは「『若手の施策』と一括りに考えること自体が、そもそも間違ったアプローチである可能性がある」という点です。問題の本質は、「若者」「Z世代」という名の曖昧な塊に、企業が一方的に「対策」を講じようとしていることにあるのです。
本記事では、紋切り型の世代論に基づいた対策という一方通行のアプローチからの脱却について提示していきます。Z世代社員との間に、一方的な関係ではなく双方向の対話を基礎とした、真のエンゲージメント関係を構築するための道筋を示したいと思います。真のエンゲージメントは、「対話」によって築かれるのです。
Profile

松島稔
Unipos株式会社 代表取締役社長
2013年、現Unipos株式会社(旧Fringe81株式会社)取締役COOに就任。同社COOとしてプロダクト企画/事業開発/事業提携/営業マネジメントを管掌。2016年、同社の東証グロース市場への上場に貢献。2021年、Sansan社との資本業務提携を主導。2021年、Unipos株式会社 代表取締役副社長COOに就任。2025年1月より現職。
「また"Z世代"か……」彼らは決めつけにうんざりしている
企業が打ち出すZ世代対策。その多くは、彼らをステレオタイプなイメージで捉え、「こうすれば喜ぶだろう」と上から決めつけた、押しつけがましいものに映ります。「デジタルネイティブ」「多様性重視」「社会貢献意欲が高い」——まるで、どこかの誰かが書いたマニュアルを暗記したかのように、同じような言葉が繰り返されます。
想像してみてください。あなたがもし、職場の上司から「君はZ世代だから、こういう働き方が合っているはずだ」と、あなたの意思や個性を無視して一方的に特定のスタイルを強要されたら、どう感じるでしょうか? おそらく、賛同どころか、反発と不快感を覚えるでしょう。
実際、Z世代をターゲットとしたアンケート調査『Z世代に聞いた!Z世代向けマーケティング施策に関する調査』*2では、「約2割のZ世代が企業が展開する「Z世代向け」と銘打った施策に対し、違和感を抱いているという事実が明らかになりました。この数値は「共感できた」「好ましい」と感じた層の割合を明確に上回っており、看過できない結果です。さらに、半数を超えるZ世代が、「Z世代『以外』の人間が声高にZ世代について語る内容に違和感を覚えた経験を持つ」と答えています。

これらの調査はマーケティング施策についての意識調査ではありますが、彼らの多くが紋切り型の「世代論」というステレオタイプに対し、違和感を持っている/拒絶していることが、明確に伝わってきます。
なぜ良かれと思った施策は、ことごとく空回りするのか? 対話なき施策の落とし穴
オフィスへの投資、最先端ツールの導入、リモートワークやフレックスタイム制度の導入……企業が推進するこれらの施策は、一見すると魅力的に見えます。しかし、なぜかZ世代の心には深く響きません。その理由は簡単です。なぜなら、これらの施策だけでは、企業とZ世代社員の間で「文脈」が共有されていないからです。
例えば、最新のコミュニケーションツールを導入したとしましょう。しかし、日々の業務プロセスやコミュニケーションの文化自体が変わらないままでは、社員にとって、それは単なる新しいおもちゃのように見えてしまいます。「対話やプロセスを透明性高く共有する文化」を育むことを目的に、「そうではない現状」を変えていきたいという「文脈」が重要となります。
多くの企業が、一見「Z世代フレンドリー」な施策を形式的に導入しているにもかかわらず、望ましいエンゲージメント向上に結びついていない現状は、まさに対話不足や納得できる文脈共有が不足していることから起きているといえます。彼らが本当に求めているのは、形式的な変化ではなく、「私」という人間としての尊重と理解、成長の実感、組織が共感できる文脈を持っているという安心感なのです。
なぜ「対話」がZ世代エンゲージメントの鍵となるのか?
なぜ、今この時代に、「対話」がこれほど重要なキーワードとなるのでしょうか? それは、Z世代の社員たちが持つ独特の価値観、そして彼らが生きてきた社会背景と深く関わっています。
Z世代は、デジタルネイティブとして、情報が常にオープンに拡散しボーダーレスなコミュニケーションが日常的に行われる環境で育ってきました。このような環境で育ったZ世代は、情報の透明性や意思決定プロセスが可視化されていることを当然のことと考えています。そのため、何かしらの情報が断片的、あるいは恣意的に切り取られて伝えられた場合、彼らはその背後にある文脈や意図を理解しようとする傾向があります。
もし組織内で情報が適切に共有されず、不透明な意思決定が行われていると、彼らは不信感を抱き、組織への帰属意識が低下する可能性があります。逆に、組織文化として透明性が高く、オープンなコミュニケーションが促進されている環境では、彼らは安心して自分の意見やアイデアを共有し、積極的に組織活動に参加するでしょう。
これに付随して、説明の合理性を強く求める世代であるともいえます。トップダウンの一方的な命令や、根拠の不明瞭な社内ルールには、強い抵抗感を示します。施策を効果的なものにするには、施策の意図・目的・そして個人への影響について、納得のいくまで対話を重ね、プロセスへの参加意識を実感できる経験が必要です。「なぜ、これをやるのか?」「私にとって、どんな意味があるのか?」対話を通じて、これらの根本的な問いに答えを見つけるプロセスこそが、彼らのえんげエンゲージメントに点火する最重要メカニズムとなります。
さらに、Z世代は、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、各種差別に対し、前世代よりもはるかに敏感です。公正さ、尊厳、心理的安全性が確保された環境でなければ、ポテンシャルを発揮することは難しいでしょう。
「対話」から始まるエンゲージメント戦略
Z世代社員との真のエンゲージメント関係を築き、彼らのポテンシャルを最大限に引き出すためには、従来のトップダウン型、指示命令型の組織運営から脱却し、対話を中心とした組織運営へと変革する必要があります。効果的な実践方法について、例えばこのように挙げられます。
・「傾聴」を軸とした1on1ミーティング
従来の1on1ミーティングは、上司から部下への業務指示、進捗確認、評価フィードバックの場として形式化される傾向がありました。しかし、対話型組織を目指すのであれば、1on1ミーティングを部下の声に耳を傾け、彼らのキャリア願望・悩み、を引を引き出すための対話の場へと転換させるべきです。上司は話し手ではなく聴き手となり、部下の話に共感し、彼らの考えを尊重する姿勢が重要です。
・組織全体の対話文化醸成
対話は、特定の部署やチームだけでなく、組織全体に浸透させる必要があります。そのためには、経営層から率先して対話に取り組み、社員一人ひとりが安心して発言できるオープンなコミュニケーション文化を醸成することが重要です。社内SNSやタウンホールミーティングなどを活用し、部門や役職を超えたプロセス・コミュニケーションを促進することで、組織全体の風通しを良くすることができます。
・対話の質を高めるためには
ただ対話を行うだけでは、十分な効果を得ることはできません。対話の質を高めるためには、目的の設定・参加者の選定・適切な場づくり・事後の振り返りといった、一連のプロセスを綿密にデザインする必要があります。例えば、1on1ミーティングを行う際は、事前に部下からアジェンダを提出してもらい、上司はそれを元に質問リストを作成することで、より深い対話が可能になります。

「対話」が拓く未来。個と組織の成長、そして持続可能な関係性の構築へ
対話は、Z世代社員のエンゲージメントを高めるだけでなく、組織全体の成長、そして個々の社員の成長にも大きく貢献します。対話を通じて、社員は自分の考えや価値観を明確にし、キャリアビジョンを描き、主体的に行動するようになります。また、組織は、多様な意見やアイデアを取り入れることで、イノベーションを創出し、変化に柔軟に対応できるようになります。
対話を重視する組織文化は、Z世代社員だけでなく、他の世代の社員にとっても働きがいのある環境を提供します。互いを尊重し、理解し合い、共に成長していく土壌を育むことで、組織と個人が持続可能な関係性を築き、明るい未来を創造していくことができるのです。
*2 https://boku-to-watashi-and.com/z-category1_detail/zview-article026
※記載されている情報はインタビュー当時のものです。
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