【2023年版調査・戦略人事】戦略人事の一番の壁は「人事部門のリソース不足」
2023.12.08
戦略人事とは、経営戦略の実現のために人事を最適化することを指す。従来の人事が給与管理などのオペレーション業務を中心としていたのに対して、戦略人事は経営戦略に合わせて人材の採用・育成などをリードする「攻めの人事」。人的資本経営を重視するトレンドと相まって、戦略人事も近年クローズアップされることが多くなった。
しかし一方で、人事組織ひいては組織全体の構造・文化を抜本的に変える必要のある戦略人事の実行は容易ではない。戦略人事を実行している企業はどのように取り組み、どのような課題を感じているのか。
「戦略人事が機能している」と回答した従業員1000名以上の組織の人事部のマネジメント層(部長・課長・係長・課長補佐相当)を対象に調査を実施した。本記事では調査結果のなかから注目すべき質問をピックアップし、戦略人事の成功のポイントと課題について考察する。
大企業の「戦略人事」に関する実態調査
調査名:Unipos 戦略人事に関する調査2023
調査期間:2023年9月29日〜同年10月2日
調査対象:大企業(従業員数1000名以上)の人事部長・課長・係長・課長補佐相当
有効回答数:上記のうち、「戦略人事が機能していると回答した」と回答した104名
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。
調査方法:IDEATECHが提供するリサーチPR「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
調査機関(調査委託先):株式会社IDEATECH
≪ご利用条件≫
1.情報の出典元として「Unipos」の名称の明記をお願いいたします。
2.ウェブサイトで使用する場合は、出典元として下記リンクの設置をお願いいたします。
URL:https://unipos.me/ja/

戦略的人事は「人事指標>事業指標」の順に影響
まず「戦略人事が機能している」と回答した企業は、どのような効果を感じているのか。具体的な影響について質問した。

「あなたのお勤め先にいて、『戦略人事』を機能させることで社内にどのような影響がありましたか」という質問では、「エンゲージメントが向上した(44.2%)」「評価制度が標準化できた(41.3%)」「有力人材が増加した(38.5%)」などの回答が高い割合になった。そして「戦略実行度が向上した(28.8%)」「生産性が向上した(19.2%)」「売上が増加した(19.2%)」と実際の経営戦略の実現に近い回答が続く。
傾向として、「人事指標」「戦略実行」「業績指標」という順番になっており、戦略人事が経営戦略の実現に至るまでのプロセスが本調査の回答から見て取れる。
経営戦略の実現までは時間を要するが、確かに組織に好影響を与えている戦略人事。では「戦略人事が機能している」企業では、どのように戦略人事を推進したのか。

「あなたのお勤め先で、『戦略人事』を機能させるために行っていることを教えてください。」という質問では、「中期経営計画と連動した人事計画(採用・配置)の策定(56.7%)」が最も高い結果に。これは経営戦略の実現を目的とする戦略人事のそもそもの意義を考えれば、当然のことだと言えるだろう。
採用・配置、目標・評価制度、教育など人事のコア業務に関する項目のほか、なかには「CHROの設置(30.8%)」「HRBPの設置(29.8%)」「CoEの設置(25.0%)」など人事組織変革に関連する回答も一定数見られた。
一般的にCHROは戦略人事を実行する最高責任者、HRBPは人事組織における事業部門のパートナー人材、CoEは従来の人事機能の専門家組織を指す。戦略人事の実行にあたって、人事組織の改革から一定の効果が得られたことが推測できる。
戦略的人事は全社的取り組みとして推進

では、戦略人事の実行にあたってはどのようなことが壁として立ちはだかるのか。「あなたのお勤め先において、『戦略人事』を機能させている中での課題を教えてください」という質問を行った。
最も多かった回答は「人事部門のリソース不足(47.1%)」。戦略人事の実行にあたっては、従来のオペレーションを中心としていた業務から、業務範囲が広がり、量も増えることから、人事部門により多くのリソースが必要となる。
また、人材の経験やスキルの面でも、より経営戦略や事業側に精通していることが求められる。戦略人事を実行する人事部門においては、経営と人事の両方をまたぐことのできる人材の採用・育成が急務となるだろう。
続く回答が「人事部門の経営へ関わる権限不足(41.3%)」「従業員の戦略人事に対する理解・協力不足(35.6%)」。人事部門だけが経営戦略と連携しようとしても、旧来の部門間セクショナリズムが壁になってしまっては、戦略人事をなし得ることはできない。
部門間ではなく、従業員レベルでそれが起こることもあるだろう。戦略人事の実行にあたっての組織体制・プロセスを整備するとともに、全社的な取り組みとして推進することが求められる。


今回の調査の対象とした「戦略人事が機能している」企業の多くは7年以上前から戦略人事を意識し始め、機能させるまでに約7割の企業が1年以上を要している。言わずもがな、人事組織だけでなく全社を巻き込んだ変革を必要とする戦略人事の実行は、早期に結果が出るものではない。腰を据えて中長期的な課題として取り組んでいく必要があるだろう。
経営戦略における人事のプライオリティを高める
今回の調査からは、エンゲージメント、心理的安全性、退職率などの人材指標から始まり、生産性や売上などの事業指標に至るまで、戦略人事の実行が一定の効果をもたらしていることが読み取れた。
一方で戦略人事の実行における最大の障壁となるのは、人事に対する「リソース不足」「理解協力不足」だ。企業は経営層から現場の社員に至るまで、人事の重要性に意識を向け、全社的に戦略人事を実行していかなければならない。
そもそも日本企業では、経営戦略内での人事へのプライオリティがまだまだ低いという現状がある。2040年には日本の労働人口は1100万人不足すると言われている一方で、Uniposが3500以上の人的情報開示を調査した結果、多くの企業では中期経営計画に人手不足への対応が織り込まれていなかった。
来るべき人口減少時代に備え、今後企業は経営戦略における人事のプライオリティを上げ、それを戦略人事として全社で確実に実行することが求められていくだろう。
※記載されている情報はインタビュー当時のものです。
この連載の記事一覧