【2023年版調査】日本企業の「“リ”スキリング」は、まだ「スキリング」の域を超えていない??

リスキリング(Reskilling)とは、「学びにより、スキルを習得し直し、新たな領域・職種へのチャレンジにつなげる」ことを指す。VUCA時代に求められる変化に強い自律分散型組織、そしてその基礎となる個人の成長を掲げ、近年多くの企業が社員のリスキリングに取り組んでいる。
しかし、企業による学習支援・研修などは以前から行われてきたことであり、リスキリングをバズワードと見る向きも少なくない。

企業のDX推進のためのIT教育の必要性とともに語られることの多かったリスキリングだが、今日本企業ではどのようにリスキリングが行われ、どのような効果を生み出しているのか。
会社としてリスキリングに現在取り組んでいる/過去取り組んでいた大企業の社員を対象に、リスキリングに関する実態調査を実施。多くの企業が若手人材育成に注力している背景を鑑み、本調査の対象は20代〜30代に限定した。本記事では同調査のなかからいくつかの質問をピックアップし、日本企業のリスキリングの現状を紐解いていく。

 


大企業会社員の「リスキリング」に関する実態調査

調査名:Unipos リスキリングに関する調査2023
調査期間:2023年1月22日〜同年1月23日
調査対象:大企業(従業員1,000名以上)に勤める20~30代の会社員
有効回答数:上記のうち、「リスキリングに現在取り組んでいる/過去取り組んでいた」と回答した110名
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。
調査方法:IDEATECHが提供するリサーチPR「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
調査機関(調査委託先):株式会社IDEATECH

≪ご利用条件≫
1.情報の出典元として「Unipos」の名称の明記をお願いいたします。
2.ウェブサイトで使用する場合は、出典元として下記リンクの設置をお願いいたします。
URL:https://unipos.me/ja/


 

リスキリングは業務時間外に。会社は学びに適していない?

DX推進のためのITスキル・知識の習得の必要性とともに多くの企業へ広がっていったリスキリング。しかし、実際にはITに限らず、さまざまなジャンルの学びが、リスキリングの対象になっている。

「あなたが行っている/行っていたリスキリングの内容を教えてください。」という問いに対して「ITスキル」と回答したのは39.1%で全体の3位。最も多かった回答は「語学」で43.6%だった。

「語学」「ITスキル」「デザインスキル」のような可視化しやすいスキルのほか、「コミュニケーションスキル」「マネジメントスキル」「キャリアデザイン」「思考力向上」などのビジネスの基礎体力になるスキルも一定の割合を占めた。

専門スキルに限らず、幅広いビジネススキルがリスキリングの対象になっていることがわかる。

「リスキリングに関する学習/研修のタイミング」の質問では「通勤時間(47.3%)」「休憩時間(46.4%)」「帰宅後(35.5%)」といずれも業務時間外が上位を占める。「就業時間」と回答したのは31.8%。

業務時間外に取り組んでいるという回答が多く、業務時間内には取り組みにくい空気や事情が存在しているのか、多くの若手社員にとって、会社は学びやすい環境ではないことが読み取れる。

約6割がリスキリングで「給与が上がった」と実感

では、大企業の若手社員はリスキリングの効果をどのように感じているのか。

今回の調査ではリスキリングにメリットを「非常に感じた(29.1%)」「少し感じた(54.5%)」と、83.6%が何らかの効果を実感していることがわかった。

どのようなメリットを感じたかを深掘りすると、最も多かった回答が「以前は対応できなかった業務を担当できるようになり、給与が上がった(57.6%)」。それ以外にも「生産性が向上した(就業時間内に業務が終わることが増えたなど)(34.8%)」「任される業務が増えた(33.7%)」など、既存の会社業務の枠内で効果を実感している傾向が見られた。

その一方で、「新しいアイデアの創出・挑戦へ繋がった」は最も少なく13.0%。リスキリングによる人材育成を、VUCA時代に求められるイノベーション創出などと紐づけて位置づける企業は少なくない。しかし、若手社員の間では、リスキリングから得られる効果はあくまで既存業務の延長線上にあるようだ。

そもそも、リスキリングは何のため?

リスキリングが既存業務の延長線上にあることは、次の質問からも読み取れる。

「あなたがリスキリングを行う目的/モチベーションを教えてください」という問いでは「昇給のため(60.0%)」が1位となったのに対して、最下位が「在籍している企業での新たな職種・領域へのチャレンジ(部署変更)のため(22.7%)」だ。

リスキリングという言葉は「新たな職種・業務に就くことを目的にする」ニュアンスを込めて用いられることが少なくないが、そういった意味ではリスキリングは本来の機能を果たしていないのが現状だ。

また、リスキリングに関してネガティブである人事担当者の懸念として「スキルを習得することで他社に転職してしまうのでは」という意見が存在する。今回の調査では「転職のため」と回答したのは30.0%。

これを多いと捉えるか少ないと捉えるかは意見が分かれるかもしれないが、「昇給のため」「昇進のため」が上位を占めていることを考えると、多くの若手社員が習得したスキルを自社のために発揮したいと考えていると、素直に受け取っても良いのかもしれない。

それよりも、素直に会社の既存のステップを目標にしているがゆえに、新しいチャレンジへのマインドが薄れていることの方を懸念すべきか。

リスキリングを挑戦につなげるために、求められる組織風土改革

DXや第四次産業革命といったVUCA時代の社会変化に対応するための学び直しとして、その存在感を強めてきたリスキリング。
しかし、それ以前にも、企業にはさまざまな教育・研修の仕組みが存在し、個人でも社会人学習やリカレント教育など、学びに関するさまざまな機会は存在した。

今回の調査では、リスキリングが給与アップなどに貢献しているというポジティブな結果が得られた一方で、新たなチャレンジにつながっているケースはまだ少ないことがわかった。新たなチャレンジにつながっていないという意味で、「“Re”skilling」の本来の定義にはそぐわず、従前の企業研修などの域を超えていないと言える。

もしも、この記事を読んでいる人事部及び経営企画部の方々が、リスキリングをイノベーション創出や新しい挑戦が生まれる自律型人材育成を目的として捉えているのであれば、自社のリスキリングが本当にその目的に寄与できているのかを改めて問い直す必要があるかもしれない。

そもそも、若手社員の頭の中には、リスキリング後に自らが新しい領域にチャレンジしていくという選択肢がない可能性がある。そこには挑戦を促す制度やポスト、挑戦の企業文化など、人材育成以外のさまざまな要因が複雑に絡んでいる。

リスキリングの推進にあたっては、ただ学習に関する金銭的な援助をしたり、研修を用意するだけでなく、リスキリングした人材を企業として挑戦に誘う文化や制度、学びの過程ではソーシャルラーニングによる学び合いなど、さまざまな仕組みが必要になるだろう。

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