【野口聡一×荒木香織】宇宙飛行士の4割は女性。NASA流ダイバーシティとは?

組織やチームづくりにおいて重要なのがダイバーシティだ。しかし、本当の意味で機能するチームをつくることは簡単ではない。では、個の力を最大限に発揮しながらチームとして高いパフォーマンスを発揮し、イノベーションを生み出していくためにはどうすればいいのか。
宇宙飛行士の野口聡一氏、ラグビー男子日本代表メンタルコーチを務めた荒木香織氏がイノベーションを起こすチームづくりについて語り合った。なお、Podcast Studio Chronicleの野村高文氏が進行を務めた。


野口聡一 氏
宇宙飛行士


荒木香織 氏
株式会社 CORAZON
チーフコンサルタント/順天堂大学スポーツ健康科学部 客員教授


野村高文 氏(モデレーター)
Podcast Studio Chronicle 代表

パフォーマンスの高いチームの特徴とは

チャレンジングな目標に向かっていけるパフォーマンスの高いチームをつくるためには何をすればいいのか。
ラグビー男子日本代表チームをはじめとしたさまざまなスポーツチームでメンタルコーチを務める荒木香織氏は、「パフォーマンス」という言葉の定義が曖昧になっている点を指摘する。

「『パフォーマンス』という言葉はこの20年くらいで日本でも使われるようになりましたが、概念がしっかりと定義されていません。『パフォーマンスが高い』とはどういう状態なのか。

成績が上がればいいといったイメージで使われることが多いですが、実際には『何のためにそのパフォーマンスを目指すのか』を共有でき、そこに近づくプロセスを確認できていれば、その時点でパフォーマンスが高い可能性があります。あるいは、高い結果を目指していてもプロセスが蔑ろになってしまうケースもあります。まずは言葉の定義を明確にすることで、チームのメンバーがそこに向かって行けるようになります」(荒木氏)

そのうえで荒木氏は、結果だけでなくプロセスや準備を重視することの必要性を説く。
「プロセスや準備、議論を大切に共有することでパフォーマンスの高いチームになりますし、それができることがパフォーマンスの高いチームの特徴です。
また、結果が出た先に何があるのかも重要です。それを明確に想像できるようになると、そこに辿り付くために何をすべきかを議論することができます。こうしたプロセスを経ることで高いパフォーマンスを発揮できるチームになれるのだと思います」(荒木氏)

宇宙飛行士の野口聡一氏は、リスクヘッジのためにもチームづくりにおいて多様性を活かすことの重要性を語った。
「昭和の時代のように右肩上がりに成長していく社会であれば、均質的な集団で1つのKPIに向かって突き進む方法でも成果を出すことはできました。
しかし、今のように先のわからない時代には前例を見ているだけでは複雑な経営課題に対応できません。リスクヘッジするうえでもダイバーシティが必要です。どこから槍が降ってくるかわからないときに、前方だけにディフェンスを集中されたら横から突かれたときに崩れてしまいますよね。
異なる強みを持つメンバーを集め、チームのベクトルを合わせていくことが、現代のチームづくりの特徴です」(野口氏)

野口氏が例として挙げたのがNASAのケースだ。近年は宇宙開発そのものが多様化しており、宇宙飛行士に求められる資質も変化している。現在NASAでは宇宙飛行士の4割が女性で、女性のトップも何人か誕生。性別だけでなく、年齢、人種、宗教などを含有したダイバーシティーのある組織となっているという。
「いかにして、まったく価値観が合わない人々のスキルを引き出し、高いパフォーマンスを発揮するチームをつくれるかが、とても重要です」(野口氏)

モチベーションを高めるには有能感、関連性、自主性をサポートする

では、メンバーが自発的に考え、行動するモチーベーションの高いチームをつくるためにはどうすればいいのだろうか。

荒木氏は「内発的なモチベーション、外発的なモチベーションについてはよく知られていますが、そもそもモチベーションは上がったり下がったりするものではありません」と語り、「有能感・関連性・自主性」の3つを軸としたモチベーションの理解の必要性を説いた。

「まず、自分がどれだけできるという有能感を持つことができること。周囲が『あなたはこれが得意だね』と気づかせてあげることも大切です。

次に、自分とチーム(メンバー)との関係性を感じられること。自分がキャリアを通して実現したいことと所属するチームがやろうとしていることがマッチしていれば、チームに貢献しようと思えるはずです。

3つ目が自主性です。これは放任主義とは異なり、自主性を育むために、基本的な部分を教えて、そのあとにクリエイティブを発揮してもらうということ。しかし、基本を教えないリーダーが多い。

有能感、関連性、自主性の3つがうまくオペレートしたときは人はそのチームに留まろう、向上していこうという気持ちになります。この3つをリーダーがしっかりとサポートすることが大切です」(荒木氏)

また、野口氏は「人的資源には限りがある。だからこそ、社員のモチベーション、エンゲージメントを高めることが重要」と語る。

「一般的に組織の中でエンゲージメントが高いと言われる層は1割くらいと言われています。この層をいかに増やしていくか。よく企業の方が『うちの会社はエンゲージメントが低い』と言っていますが、エンゲージを高める取り組みをしないのはもったいないと思います。日本の会社に人的資源を切り捨てていく余裕はもはやありません。
我々はつい、ドリームチームで始められるような幻想を持ちやすいですが、すべてのチームは寄せ集めです。最高峰が集うスポーツの日本代表選手ですら寄せ集めですよね。寄せ集めの人材の個性やリソースをしっかりと認識して、限られた人的資源をいかに使っていくかが重要です」(野口氏)

リーダーシップはスキルであり、学び続けることが大事

では、パフォーマンスの高いチームをつくるためにはどのような点を意識すればいいのだろうか。また、変革に導くリーダーにはどのようなリーダーシップが求められるのか。

野口氏は「リーダーの役目は、目標や方針を示し、ベクトルを合わせること。その点でリーダーはとても大事ですが、同じくらいにフォロワーシップも大事です」と語る。

「メンバーはリーダーのイエスマンではダメ。リーダーが示した目標や方針に対して建設的に批判し、チームとして良い方向に導くことも必要です。たとえば、NASAの研修では、チームの中でリーダーを次々と変え、リーダーシップ、フォロワーシップの両方を学ぶ仕組みがあります。
最終的なリーダーの役目は決断して責任を取ることですが、その前段階でチームビルディングの役割も求められます。チームの完成度を高めるためには、時にはトップダウンで、時にはボトムアップでコミュニケーションを取っていくことが重要です。必要なリソースやメンバーのモチベーションを引き出し、多様性を保ちつつもチームのモチベーションを高め、チームのベクトルを合わせていくところが、リーダーの腕の見せ所です」(野口氏)

エンゲージメントの高いチームをつくるために、リーダーはフォロワーの意見をしっかりと聞くことが大切だ。

「たとえば、『意見を聞きたい』といって面談をしたあとに何のフィードバックもなければ、フォロワーは『発言した意味がない』と感じ、エンゲージメントは低下してしまうでしょう。リーダーはボトムアップで出た意見に対して、KPIや具体的な対応策を示す必要があるのです。それができるリーダーは信頼され、チームのエンゲージメントも高まっていきます」(野口氏)

また、野口氏は「リーダーは最新の理論をしっかり勉強しなければならない」とも語る。

「何年か部長をやっているだけで解決できるほど、リーダーやチームづくりは甘くない。リーダーとは何か、チームビルディングとは何かなど、最新の理論を勉強しなければ適切に実践することはできないと思います」(野口氏)

これに同感した荒木氏も「リーダーは生まれながらのものではなく、スキルとして後天的に身につけるもの」と語り、変化をリードしていくのがリーダーであり、良い影響をもたらさない名前だけのリーダーは無意味だと指摘する。

「日本企業の課題は人材育成に関する投資が少ないこと。アメリカの約60分の1程度と言われています。意地悪な言い方をすると、日本では自分より優秀な部下を蹴落としたいと思ってしまう人も多いのではないでしょうか。
本当にリーダーがすべきことは、対話をしながらメンバーの持ち合わせるスキルを引き出すことです。リーダーシップを自身が発揮することによって、その組織に次世代のリーダーが生まれてきます。そして、リーダーシップのもとにフォロワーが全力で組織に貢献しようとすれば、組織が変わっていくスピードは速まるはずです」(荒木氏)

では、スキルとしてリーダーシップを身につけるためには何を意識すればいいのか。

荒木氏は、「『今日はリーダーとしてみんなのために何ができたか』『今日はこれを学んだ』と考え、学び続けることが大事」と語る。野口氏は、「新しい理論が出て来たらしっかり学ぶのは当然のこと。そのうえで、小さなシミュレーションを積み重ねていくと良い」と語った。

自社の資源に光を当て、イノベーションを起こす勇気を

最後に、企業としては今後どのように取り組んでいくべきなのか。

荒木氏は「日本人はある程度我慢しながら鍛錬を継続できる良さを持つ反面、変化に対する勇気やモチベーションが低い傾向がある」と語る。そのうえで、日本企業が意識すべき点として次のピントを挙げた。

「日本の組織をもっと良くしていくためには、自分たちの良さにもっと気づいて、それをキープしていくことも必要。また、変化にあわせてチャレンジしていくことも大切です。変革する勇気を持つリーダーがいれば、フォロワーも反応を示してくれるはず。
さらに、成果を出すチームをつくるためには、日頃からどこを変化させればいいかを考える習慣を持つことも必要です。
今の若い世代は、意味がわからないことをやることを嫌いますし、『背中を見てついてこい』も通用しません。こうした昔ながらの風土も変革したほうがいいでしょう」(荒木氏)

野口氏は、「自分たちの組織に眠っている資源にしっかりと光を当てていただきたい」と語り、リーダーに向けて力強いメッセージを述べた。

「何か変革を起こそうとしたときに『前例があるの?』『誰が責任取るの?』というやりとりが交わされること、ありますよね。でも決断せず、責任を取らないリーダーには誰もついていきません。
『任期中のリーダーシップゼロ、何のイノベーションも起こせずに去った人』と評価される日本人を私は海外でたくさん見てきました。任期が終了して去るときに、『私のリーダーシップのおかげでこのチームはこれだけのイノベーションを果たした。これからも頑張ってほしい』と胸を張って言えるくらいのリーダーシップを発揮していただければと思います」(野口氏)

日本の組織はもっと良くなるポテンシャルを秘めている。大事なのは、自社が今まで持っていた良さを活かしながら、変化にチャレンジする勇気を持つことだ。

※記載されている情報はインタビュー当時のものです。

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