【長尾彰氏】「グループ」が「チーム」になるためにリーダーがすべきこと
2023.06.27
企業経営における積年の課題の1つ、それがチームづくりだ。社員が有機的につながったチームと、それを率いる有能なリーダーこそが、会社の将来の命運を握っていると言っても過言ではない。リーダーは社員の働きがいをどうマネジメントしていけば良いのか。多くの企業・組織で20年以上にわたり3,000回を超えるチームビルディングを実施してきた組織開発ファシリテーター・長尾彰氏がうまくいくチームの原則を詳細に解説した。
Profile

長尾 彰 氏
株式会社ナガオ考務店代表取締役、組織開発ファシリテーター
日本福祉大学卒業後、東京学芸大学にて野外教育学を研究後、冒険教育研修会社、玩具メーカー、人事コンサルティング会社を経て独立。企業、団体、教育、スポーツの現場など、約20年にわたって3000回を超えるチームビルディングを実施、現在は複数の法人で「エア社員」の肩書のもと、事業開発やサービス開発、社内外との横断プロジェクトを通じた組織づくりをファシリテーションする。株式会社ナガオ考務店代表取締役、一般社団法人戦災復興支援センター代表理事、学校法人茂来学園大日向小中学校の理事を兼任する。著書に『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいくチームの話』(学研プラス)がある。
グループをチームに成長・発達させるには?
会社組織内のチームをうまく機能させるための考え方のひとつに、1960年代に心理学者、ブルース・W・タックマンが提唱した「タックマンモデル」がある。
タックマンモデルをベースにした組織の成長・発達モデルでは「集団・組織は“フォーミング(同調期)→ストーミング(混沌期)→ノーミング(調和期)→トランスフォーミング(変態期)”の4ステージを段階的に駆け上がりながら“グループ”から“チーム”へと成長・発達していく」とされ、近代の会社組織に多大な影響を与えている。
なおタックマンは後年、4番目に続く5番目のステージとしてアジャーニング(散会期)を加えている。
「これら成長・発達モデルをベースに組織を観察すると、第2ステージ(ストーミング)から第3ステージ(ノーミング)に移るとき、会社の集団・組織は単なるグループからチームに姿を変えます。ではグループとチームの明確な違いとは何でしょうか」
そう提示するのは、株式会社ナガオ考務店の代表取締役で、組織開発ファシリテーターとして活動する長尾彰氏だ。
長尾氏はこれまで『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいくチームの話』などの自著を上梓。いずれも漫画『宇宙兄弟』作中の登場人物やエピソードを範としながら、現代社会に求められているリーダー像・チーム像を解説している。
「グループとチームにはどんな違いがあるのか。私は、与えられた役割・ルール・目標で機能している状態がグループ、それらを自分たちで生み出し機能する状態がチームであると考えています」

長尾氏曰く、組織の成長・発達モデルの第1ステージで求められるのは「何を言っても大丈夫」「チャレンジで失敗しても責められない・怒られない」とメンバーが感じられる、いわゆる心理的安全性だ。
その状態ができてから第2ステージに移れば、メンバーは皆、本音で話すようになるだろう。しかしときとして「私はこれをしたい」「これをしたくない」といった具合に、各々が好き勝手なことを言い出すケースに陥る。そうしたときのガイド役となるのが、組織として持つ明確な目的・ビジョン。それがあることで一旦組織はまとまるという。
「第2ステージまで来るとメンバー間で『今度はこんなふうにやってみようよ』など能動的な活動も徐々に増えていくでしょう。しかしそれはあまり長続きしません。なぜなら必ずうまくいかないことが徐々に発生してくるからです。だからこそメンバーは、組織内の役割・ルール・目標を自分たちのグループに求めるようになっていく。その状態こそが第3ステージ=ノーミング(調和期)で、このときで初めて自分たちの“規律・秩序”を自分たちで決めようとします。おそらくその後の第4ステージでは、自分たちが出した成果を自ら祝福・伝承できるチームにまで成長・発展していることでしょう」
リーダーには4つのスタイルがある
ではそうしたグループがチームに成長・発達するためには、どんなリーダー像が求められるのか。長尾氏はこれまで数々の企業のチームビルディングをしてきたなかでリーダー像は①ファシリテーター型リーダー②マエストロ型リーダー③ティーチャー型リーダー④コンサルタント型リーダーに大別できると気づいた。
「小学校のときの遠足を思い出してください。列の一番先頭に立って『早く来いよ』『こっちだよ』なんて声を掛けながら文字通り皆を引っ張る人がいました。
それとは別に、列の一番後ろに入り『もうちょっとだよ』『頑張ろう』と声をかけて皆の背中を押す人もいたと思います。前者はティーチャー型もしくはコンサルタント型、後者はファシリテーター型もしくはマエストロ型です。
他方、引っ張るタイプと押すタイプの中でも、『結果がすべてではない』を信条とするプロセス志向と、『結果を残さなければ意味がない』とする成果志向に分かれる。結果的として2×2=4タイプに派生していくと考えました」

リーダーとしての自分のスタイルがどこに該当するのか自覚・把握しておくと、こんな利点があるという。
「例えばファシリテーター型とコンサルタント型は横軸・縦軸とも正反対の関係にあります。しかしだからこそその2人が組めば良い仕事ができる。とにかく答えを出したい・成果を残したいコンサルタント型は仕事においてとても堅実ですが、周りのことを考えずにグイグイと引っ張りすぎてしまうことがある。チームで見れば、そうした人に付いていけないメンバーも出てきてしまうでしょう。
そういうときは『前に出るのはちょっと大変だよね……』とか言いながらフォローしてくれるファシリテーター型の出番です。これはティーチャー型とマエストロ型の関係性にも同じことが言えます」
いずれにせよ、これら4タイプがバランスよくチーム内に介在していると、それぞれの強みを活かしたチームワークが生まれる。「チームワークとは皆が同じことを同じようなレベルで同じようにできるようになることではなく、それぞれの違いを活かすこと」だと長尾氏は述べた。
チームは仕事を通じて育まれる
長尾氏はさらに「良いチームがあるから良い仕事ができるのではなく、良い仕事が良いチームを作ってくれる」と強調した。どういうことか。
例えばここに1人の優れたリーダーがいたとする。あるプロジェクト推進にあたってチーム組成が必要となり、会社のなかからメンバーを収集。同リーダーによるチームビルディング合宿も実施された——。
それはいろいろな組織によく見られる典型的なアプローチにも思えるが、果たしてそれによって良いチームができるのだろうか。
「私は懐疑的です。なぜなら『チームにならないとできないこと』というお題の設計があって初めて、グループはチームに成長・発達できるから。タックマンモデルのところで申し上げた通り、リーダーから『あれしなさい、これしなさい』と言われているうちはグループの状態を抜け出せていません。自分たちで役割・ルール・目標を定められるチームになるには与えられるのではなく自分たちで生み出すことに専念しなければならない。となれば、それは合宿などではなく、チーム一丸で仕事に挑むなかで育まれるもの。良い仕事が良いチームを作る、とはそういうことです。
自チームが好ましいパフォーマンスを見せないとき、原因をリーダーシップや人間関係に求めるのではなく、業務設計や作業手順にあると考えてみましょう。今の仕事の仕方がチーム化を阻害している場合があります。リーダーは合宿やキックオフで『チームビルディングが完了した』とせず、日常の仕事(事業)を通じて業務設計・作業手順を細かく調整しながらグループがチームに成長・発達する支援をする、という感覚を持ってみるとよいでしょう」
長尾氏は仕事を通じてチームを育む条件として16の項目を挙げる。

そのなかでも特徴的な項目が「フローが体験できる」だ。ここで言うフローとは心理学者のミハイ・チクセントミハイが提唱した概念で、「没頭できる状態」「夢中になれる状態」を指している。
「自分が挑む挑戦の度合いと自分の持つ能力がアンバランスだと、その人はその挑戦に対して不安な気持ちや退屈な気持ちを感じやすくなります。だから挑戦度合いと能力がバランス良い状態を保たなければいけませんが、これが結構難しい。バランスの良い状態にも、挑戦の度合いがその人の能力を少しだけ上回るからこそ挑戦しがいがあると感じられる状態と、能力が挑戦の度合いを少しだけ上回り得意なことをやっているから楽しいと感じられる状態の2種類があります。バランスをとるのは難しいですが、メンバーがフローを感じられる状態を常に作れれば、チームはずっと良い状態を維持できるでしょう」
チーム化を促す目標設定の特徴
集団が1つの方向を向くためには目標が必要だ。では、チーム化するための目標設定とはどのようなものなのか。長尾氏は自らのチームづくりの仕事を振り返り、20の特徴を挙げた。

長尾氏は「最終的にはチーム化を促す目標設定も考えなければいけない」としたうえで「目標の実現可能性は50%くらいでちょうどでよい」と語る。すなわち、人は「やってみないと分からない」くらいの難易度のほうがモチベーションを刺激するが、実現可能性が極端に低いと不安を感じるし極端に高いと関心を失ってしまう。ここでもフローな状態になれる目標設定がポイントになるということだ。
そして最後に「もう1つ目標設定に重要なポイントを挙げるとすれば、それはナラティブ=物語性を語れるか」と付け加えた。そのうえで理由をこう話す。
「例えば勧善懲悪の言葉の意味・概念を、私たちは仮面ライダーやウルトラマン、プリキュアやセーラームーンで知ったと思います。そのように私たちは自分たちが意識している以上に物語性を通じて物事の意味・概念を獲得している。これはビジネスでも同じ。例えば会社の目標や理念を誰かに伝えるとき・浸透させたいときにはナラティブなアプローチが有効な手立てとなるでしょう。チームづくりにおいても物語を通じて語ることができればメンバーも腹落ちしやすくなる。ナラティブに語れるリーダーを目指してみてください」
※記載されている情報はインタビュー当時のものです。
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