【言語化とは?】組織を強くする「言語化力」。現役コピーライターが教えるたった1つのコツ

言語化とは、自分の考えや感情を整理し、適切な言葉にして他者や自分自身に伝える力を指します。ビジョンを浸透させ、現場を自律的に動かすためには、メンバー一人ひとりが考えを言葉にできる力が欠かせません。

しかし、言語化に苦手意識を持つ人も多いのが実情です。本記事では、『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』『こうやって頭の中を言語化する。』の著者・荒木俊哉さんに、言語化力の重要性と、今日からできる具体的な実践法について伺いました。

Profile

荒木俊哉 氏

株式会社電通 コピーライター

企業広告・ブランド開発領域を中心に活動。コンセプト設計、コミュニケーション戦略支援に携わるほか、組織開発・人材育成領域でも実績を重ねる。近年は、言語化力や思考整理をテーマに企業研修、講演活動を展開。著書に『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』(SBクリエイティブ)『こうやって頭の中を言語化する。』(PHP研究所)がある。

 

言語化とは?なぜ今、組織に必要とされているのか

── 最近「言語化」という言葉をよく耳にします。その背景には何があるのでしょうか? 

そうですね、本当に増えましたよね。実は僕自身、2~3年前に言語化をテーマに本を書いてほしいと依頼されたとき、「言語化って何ですか?」と聞いたくらいで、その頃はまだ世間であまり使われていない言葉でした。それがここ数年で急激に注目されるようになった印象があります。 

注目されている理由はいくつか考えられますが、まず一つ目は働き方の変化です。リモートワークやオンライン会議が増え、非言語的な雰囲気に頼らず言葉でコミュニケーションする比率が高まりました。画面越しだと表情や空気感だけでは伝わりにくいので、以前にも増して「言語化」の重要性が増しているのでしょう。

二つ目は組織風土の変化です。最近は上司が部下に一方的に指示を出すのではなく、多様なメンバーの意見を取り入れる企業が増えています。例えば会議で「若手の意見をもっと聞こう」という場面が増えましたよね。上司も「若い人の意見を聞くのが良い上司だ」という空気があり、部下に「どう思う?」と積極的に問いかけるようになってきました。

その意味では、これまでは社長や管理職など一部の人だけに求められていた「言語化力」が、今や若手を含めた全社員にとって他人事ではなく「自分事」になってきたと言えます。発言しないと会議にいる意味がない、とまで言われることもありますよね。それくらい自分の考えを言葉で表現できるかどうかが個人のパフォーマンスに直結する時代になってきたのだと思います。

そのような環境の変化にともない、意見を求められる機会がふえたことで、「うまく言語化できない」と悩む若手も増えているように感じます。発信機会が増えた分、「言葉にできない」ことへの戸惑いや不安も広がっているのかもしれません。

言語化は「どう言うか」より「何を言うか」

── 「言語化が大事」と言いますが、具体的にはどうすれば良いのでしょうか。荒木さんは「言語化には聞く力が大事」とおっしゃっていますが、どういうことですか?

多くの人は「言語化が苦手」と言うとき、自分の考えをうまく伝えられない、表現できないという悩みを想像すると思います。つまり「どう伝えるか」というアウトプット面に意識が向きがちです。

でもその前に大切なのは、「何を伝えるか」を自分の中で磨いていくことなんです。料理に例えると「どう伝えるか」はレシピ、「何を伝えるか」は食材に当たります。どんなに調理法(伝え方)を工夫しても、肝心の食材(内容)が良くないと美味しい料理は作れませんよね。ですから、伝え方を考える前に、まず自分は何を伝えたいのかを言葉にしながら深掘りする必要があります。

そこで重要になってくるのが「聞く力」です。ここで言う「聞く」とは二つの意味があります。ひとつは他者の話を聞くこと。もうひとつは自分の内なる声を聞くことです。

例えば仕事で誰かから相談を受けたとしましょう。相手の話を丁寧に聞いて、自分はどう感じたかを自問自答してみる。こうして他者の声と自分の声の双方を「聞く」ことで、初めて「何を言うべきか」が見えてきます。

頭の中を一度棚卸しするイメージですね。要するに、言語化とは単に口ベタを克服するテクニックではなく、一連の思考プロセスなのだと思います。その出発点にあるのが「聞く」というステップなのです。

誰でもできる言語化の実践法「それってどういうこと?」「それってなぜ?」

── とはいえ、頭では分かっていても「何を言えばいいか」まとめるのが苦手な人も多いです。そうした言語化力を高めるために、今日からできる実践法はありますか? 

誰でも簡単に実践できる方法として、ぜひ習慣にしてほしい「問いかけ」が二つあります。シンプルですが効果的なキーワード、それが「それってどういうこと?」と「それってなぜ?」です。

まず「それってどういうこと?」と自分に問うことで、物事の本質が見えてきます。例えば漠然と「うちの組織風土を良くしたい」と考えているとします。そのとき「そもそも、組織風土ってどういうこと?」と掘り下げてみるんです。

すると「組織内の空気感かな?」とか「肩書や年次に関係なく率直に意見を言える雰囲気かな?」といった具合に、自分なりの言葉で定義し直すことができます。こうして便利だけれど曖昧な言葉をあえて深掘りすることで、本当に考えるべきポイントが見えてくるんです。

もう一つの「それってなぜ?」も同じように使えます。例えば「最近この仕事が面白くない」と感じているとしたら、「それってなぜ?」と原因を掘り下げてみる。最初は「先輩が自分の意見を聞いてくれないからつまらない」と思っていても、「なぜ先輩は自分の意見を聞いてくれないんだろう?」と重ねて問うことで、新たな気づきが生まれるかもしれません。こんなふうに「なぜ?」を繰り返すことで、最初は他人のせいだと思っていたモヤモヤが自分自身の課題として捉え直せることもあります。

問いを重ねるプロセス自体が内省(自己理解)につながり、それもまた言語化の大切な一歩なんです。

ポイントは、これらの問いを習慣化することです。頭の中だけで考えていると混乱しやすい人は、最初のうちは紙に書き出してみることをおすすめしています。箇条書きでも何でも良いので、問いと答えを書き出してみると、自分の考えが客観的に整理できます。 最初は意識的に時間を取って練習してみると良いでしょう。

例えば一日数分でもいいので、「これってどういうことだろう?」「なぜなんだろう?」と物事を掘り下げて考える時間を作ってみる。続けていくとクセになって、普段から頭の中で問いかけて言語化するサイクルが回るようになります。そうすれば、自分なりの意見がすでに準備されている状態になりますので、いざ人前で話すときにも「結論から伝える」など表現面の工夫をする余裕が生まれるでしょうし、自分の言葉で語れる強さが身についていきます。

言語化が組織風土改革に与えるインパクト

── 個人の言語化力を高めることは、組織のコミュニケーション活性化や風土改革にどうつながるのでしょうか? 言語化できる組織はなぜ強いと言えるのか、荒木さんのお考えを教えてください。

言語化が進んだ組織は、当然ですが、コミュニケーションが活発になります。分からないことを「これってどういうことですか?」と気軽に質問できる風土があれば、誤解や遠慮が減り、議論の量も質も向上しますよね。お互いの考えていることが共有されやすくなれば、意思疎通のロスが減って生産性も上がります。

逆に、質問や対話を面倒くさがる雰囲気があるとコミュニケーション量は減ってしまいます。先輩に「それってどういう意味ですか?」と尋ねたら「自分で考えろ」と突き放された、というような経験が積み重なると、社員はだんだん発言しなくなってしまうでしょう。それでは組織として非常にもったいない。「問いかけ歓迎」の姿勢をリーダー層が示すことが大切ですね。

もう一つ、組織全体で共通言語を持つことの効果も見逃せません。物事の目的やビジョンがチーム内で言語化され共有されていれば、判断に迷ったときに立ち戻る「北極星」ができます。

企画の目的を最初に言葉で定めておけば、アイデアの良し悪しもブレずに判断できますよね。同じように、「私たちの部署は何のために存在するのか」「このプロジェクトのゴールは何か」がメンバー全員の頭の中で言葉になっている組織は、意思決定が速く、一体感があります。

実際、ビジョンの言語化によって組織が強く回り始めた例もあります。僕がビジョン策定をお手伝いしたオンライン診療を中心とするのベンチャー企業では、「すべての人が、納得して生きて、最期を迎えられる世界を。」というビジョンを掲げました。一見すると事業ドメインからかけ離れた壮大な言葉ですが、社員たちは「自分たちのサービスはこの大きな目的に貢献しているんだ」という共通の意識を持つようになったんです。そのビジョンに共感して入社したいという人も増え、人材採用の面でも好循環が生まれました。

大企業でも、長年の社風やお決まりの「〇〇(=社名)らしさ」にとらわれている場合、改めてそれを言語化し直してみる意義は大きいと思います。暗黙知に頼っていた部分を「言葉の見える化」によってアップデートするイメージですね。

例えば「〇〇らしい仕事とは?」と問い直してみる。昔は感覚で共有されていた社内の前提も、時代が変われば意味合いが変わっているかもしれません。それを一度言語化してみることで、「私たちにとっての〇〇とは何か」が改めて明確になります。共通認識が言葉として定着すれば、新しいカルチャーづくりの強力な土台になるはずです。

── 組織内のコミュニケーション活性化のために言語化力を高めたいと考えている人に向けて、メッセージをお願いします。

言語化は特別なスキルではなく、日々の問いかけと内省によって誰もが磨いていける「習慣」です。特に、今のように多様な人材が混ざり合う組織においては、「自分が何を考えているか」を言葉にして伝えることが、信頼や成果にもつながっていきます。

まずはぜひ、自分に問いかけてみることから始めてみてください。「それってどういうこと?」「なぜそう思った?」というシンプルな問いが、チームの会話を深め、組織を一歩前に進めていく大きな原動力になります。

 

※記載されている情報はインタビュー当時のものです。

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