個人からチームへ。現代型マネージャーに求められる5つのコミュニケーション心得
2024.12.23
経営環境の変化が著しい現代では、社員一人ひとりが自律的に行動できる組織が求められています。マネージャー職においても、従来の指示・管理型のマネジメントから、チームの力を最大限に引き出し個々の強みを活かすマネジメントへ、その役割が移り変わっています。では現代のマネジメントはどのように振る舞うべきなのでしょうか。
前回の「強いカルチャーが競争力を高める?「ものづくり白書2024」から読み解く」では、製造業における組織課題を解説しました。続編となる本記事では、管理職・マネージャーがどのような心得を持ち行動すべきか、Unipos組織コンサルタントの高橋洸也が解説します。
Profile
高橋 洸也
ビジネス本部 カルチャー変革部 戦略責任者
人的資本経営コンサルティングDiv. 人的資本経営コンサルタント
CX戦略室 プロダクトマーケティングマネージャー
Unipos株式会社の前身であるFringe81株式会社に新卒入社。人事部での採用・人材開発/組織開発や、広告代理事業でのセールスを経験。Unipos社へ事業統合後、コンサルタントとして大手製造企業のカルチャー変革にコミット。現在は、プロダクト/サービス全体の価値向上に向けてCX戦略室 PMM/人的資本経営コンサルタントを兼任。
マネジメント業務の「量」「質」の変化
元来、マネージャーの役割は多岐にわたります。マネージャーには主に10の機能があると言われ、「対人」「情報」「意思決定」に関わる、数多くの業際にまたがった業務が求められているのです。
ただでさえ負荷の高いマネジメント業務が、近年さらに高負荷化していることもわかっています。パーソル総合研究所『中間管理職の就業負担に関する定量調査(2019)』では、「昨年と比べて組織の業務量が増加した(46.3%)」「自分の組織は人手不足である(50.8%)」と、中間管理職の半数前後が、「業務量増加」「人手不足」を実感しているという結果が出ています。

また、マネジメント業務は、「量」が増えているだけでなく、その「性質」にも変化が見られます。
その背景にあるのが経営環境の変化です。VUCAと言われる現代では、高速な変化に対応していかなければなりません。そのため業務も、従来の定型的な業務から、非定型的な業務やプロジェクト型の業務へと大きくシフトしています。
株式会社ラーニングエージェンシー『組織・チームのあり方の変化に関する意識調査』によると、一般社員に期待されることとして「非定型的な業務・プロジェクト型の業務で役割を遂行する」「チームで協力して成果を上げる」「自ら現場で判断し、行動する」「周囲を巻き込みリーダーシップをとる」といった項目が、10年前と比較して40〜50ポイント以上増加しています。
つまり、現代の組織・チームでは以前よりもより高度な「協働」が求められるようになっているのです。当然、マネジメント職はチームの「協働」を促す存在でなければなりません。

この変化に伴い、一般社員に求められるスキルセットも変わっています。特に重視されるようになってきたのが「言語化する能力」「共感力」。チームで「協働」していくために、自身の考えを適切に表現し、他者の意見に耳を傾ける能力が、これまで以上に重要となっているのです。
マネジメントも同様にこれらのスキルが求められるのは言うまでもなく、メンバーひとりひとりがこれらのスキルを身につけ、最大限に発揮できる環境を用意しなければなりません。そしてそのために必要なのが、チームにおける適切なコミュニケーションなのです。
現在型マネージャーに求められる5つのコミュニケーション心得
では、現代のマネージャーは業務の中でどのようなことを意識して、どのように振る舞うべきなのでしょうか。
前提として、マネージャーとは常にチームの中で成果に対して責任を負う存在です。しかし、チームで「協働」していくためには、マネージャーだけでなく、メンバーもまたチームや成果に対してコミットする必要があります。
そして、そのコミットを生み出す源泉となるのが、社員一人ひとりの「仕事の意義」です。自身の仕事の意義を強く認識している従業員ほど、ワークエンゲージメントや組織へのコミットメントが高くなることが明らかになっています。つまり、仕事の意義をしっかりと認識できている従業員は、より主体的に業務に取り組み、より高い成果を上げる傾向にあるのです。
その「仕事の意義」を醸成させるには、マネージャーとしてどのような支援が必要なのでしょうか。ここでは、様々な資料や調査から、現代型マネージャーに求められるコミュニケーションの心得を5つピックアップし、解説します。
1.マネージャーとメンバーの認識の差を理解する
現在、多くの企業では1on1などの面談の場が設けられています。そこでは社員が仕事の意義を認識した上で主体的に業務が行えるように、マネージャーとメンバーの間でコミュニケーションが行われています。
多くのマネージャーは、すでにメンバーをモチベートするためにできる限りのコミュニケーションをとっていると感じているかもしれません。
しかし、マネージャーとメンバーの間には、しばしば大きな認識の差が存在しています。の調査では、管理職の70%が「部下の意見を採用している」と考えている一方で、そのように感じているメンバーはわずか16%にとどまっています。

この認識のズレは、それぞれが持つ情報や役割の違いによって生じており、どちらが正しいという問題ではありません。重要なのは、このような認識の違いが存在することを前提としたコミュニケーションを行うことです。
2.日常的に感謝や称賛を伝える
そのために、マネージャーには日頃から「心ある行動」が求められます。メンバーに関心を持ち、成果やプロセスに対して称賛・感謝を示すことが、仕事への意欲創出につながるのです。
これらの行動は、「上司からの信頼と承認」として認知され、メンバーの「能力や仕事への自信」「職場への肯定感」「仕事への意欲」を高める効果があります。特に、成果を具体的に褒めることは、望ましい行動の定着を促す上で効果的です。
また、前編「強いカルチャーが競争力を高める? 「ものづくり白書2024」から読み解く、製造業の人材課題 」で言及した通り、マネージャーがメンバーの日頃の行動を見過ごさずに拾い上げることは、組織のカルチャー醸成の土台となります。

3.「知と活動の見える化」を促進する
また、チーム内での「知と活動の見える化」を促進することも重要な施策となります。これにより、各メンバーのノウハウやスキルの共有が進み、チーム全体の生産性と相乗効果が向上します。
逆に、コミュニケーションが希薄化すると、各自がノウハウを抱え込み業務が属人化し、チーム内外の動向や変化への感度が低下してしまいます。

4.個々のメンバーとチームの専門性の認識を一致させる
チームの目標達成に向けては、本人とチームの専門性の認識を一致させることが重要です。チームの目標達成度には、チームの大きさや知識のストック量ではなく、個々のメンバーの専門性に対する本人とチームの認識の一致度が強く影響しています。これは、相互の理解・協働・自律性が、チームの成功にとって不可欠であることを示しています。
5.マネージャーの負荷を減らすマネジメント
さらに、マネージャーの負荷軽減のために、上司だけが行動するのではなく、部下の積極的な行動を促すことが重要です。
例えば、自分に割り当てられた以上の仕事を進んで行う、上司の出す要求や目的を理解し一生懸命働く、といった行動を奨励することで、目的のための行動が定着化し、管理職の負荷軽減にもつながります。
チームのコミュニケーション活性化が成果を生む
チームのコミュニケーションを活性化することは、生産性向上に直結する重要な要素です。ここでは、具体的な成功事例として、ある企業の取り組みを紹介します。A社では、従来、上司世代が叱ることが多く、部下との関係が悪化し、特に若手の離職が増加するという課題を抱えていました。
この課題に対し、上司と部下が相互に称賛を送り合う文化を醸成したことで、心理的安全性が向上し、若手社員のモチベーション向上につながりました。特筆すべきは、立場を越えたコミュニケーションの実現です。新入社員が所属長や支店長クラスと積極的にコミュニケーションをとるなど、従来では生まれにくかった関係性が構築されています。
このような取り組みの結果、「コミュニケーションがとりやすい」という評価が社内で高まり、採用や教育面でもポジティブな効果が表れています。この事例は、適切なコミュニケーション施策の導入により、組織の課題を解決し、より健全な職場環境を築くことが可能であることを示しています。
これからのマネジメントでは、個々の力を最大限に引き出し、チームとしての相乗効果を生み出すことが成功の鍵となります。そのためには、従来の管理型リーダーシップから、より柔軟でインクルーシブなリーダーシップへの転換が求められています。マネージャーには、メンバーひとりひとりの強みを理解し、活かしながら、チーム全体の成長を導くという、より高度なマネジメント能力が期待されているのです。
以上が、現代のマネージャーの役割に対する解説と、解決に導くためのアプローチのご紹介でした。続く後編では、「これからの組織作り」について解説します。
※記載されている情報はインタビュー当時のものです。
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