社員から社会へ。三井住友トラスト・ホールディングスの目指す「ウェルビーイングの好循環」
2024.07.18
目次
2024年4月に創業100周年を迎えた三井住友トラスト・ホールディングス。2023年からスタートした中期経営計画では「信託の力で、次の100年を切り開く」というスローガンを掲げ、信託機能と銀行機能を融合し、新たな価値を創造することを目指している。社会が変化し、人材の流動化が加速する中、三井住友トラスト・ホールディングスではどのように人的資本経営に取り組んでいるのか。三井住友トラスト・ホールディングス執行役常務で人事を統括する藤沢卓己氏が語った。

藤沢卓己 氏
三井住友トラスト・ホールディングス株式会社
執行役常務
価値創造の原動力は「ウェルビーイングな社員」
「人生100年時代」となり、将来の不安に備えた資産管理のニーズが高まっている。こうした中、三井住友トラスト・ホールディングスでは金融市場のさらなる活性化やサステナブルな社会の発展に取り組んでいる。
社会課題解決と市場の創出・拡大に貢献する取り組みの規模を示すべく、三井住友トラスト・ホールディングスでは独自の指標「AUF(Assets Under Fiduciary)」を設定。AUFとはお客様から預かった資産運用残高や資産管理残高、同社の自己資金による自己勘定投資を合わせた数字のこと。このAUFを高めて投資機会を創出することで市場の資金・資産・資本の好循環を促し、それらの資金が社会課題をはじめ、すべてのステークホルダーのウェルビーイング向上に貢献していくという考えで、社会課題解決に取り組んでいる。
また、「信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる」というパーパスの実現に向けて三井住友トラスト・ホールディングスが重視しているのが、社員一人ひとりの内発的な動機だ。三井住友トラスト・ホールディングス執行役常務の藤沢卓己氏は次のように語る。
「心身共に健康な社員が自ら考えて行動し、お客様や社会に評価される。これによって社員自身がやりがいや誇りを感じ、さらに前向きにお客様や社会に貢献できるようになる。その結果として、社会全体のウェルビーイングにつながっていく。この好循環を回していくことが重要だと考えています」(藤沢氏)

こうした考えのもと、三井住友トラスト・ホールディングスでは社員のウェルビーイング向上を人的資本戦略の中心に置き、積極的に投資を行っている。同社では社員のウェルビーイングを「健康経営」「エンゲージメントの強化」「組織力の強化」「人材力の強化」の4要素にわけて、それぞれを強化する施策を実施している。

「幅広い業務領域を有する当グループの最大の強みは、それぞれの業務分野における専門性の高い人材が互いの持ち味を発揮しながら能力を高め合い、一体となって価値を創造できることです。それを実現するためにも、多様な人材の個性を尊重し、社員一人ひとりが最大限能力を発揮できるような組織風土や仕組みを整えていく必要があると考えています」(藤沢氏)
社員の構成変化に備え、人材育成に注力
三井住友トラスト・ホールディングスではバブル期前後の男性社員が今後定年退職を迎えることにともない、社員構成比率で若手層と女性社員の割合が増えつつある。2030年には社員が現状から約700名減少し、女性比率は現在の46%から53%へと上昇する見通しだという。
こうした将来に備え、三井住友トラスト・ホールディングスでは高度な専門スキルの継承、若手の育成、育児や介護などとの両立支援強化の重要性が一層高まっていくと予想する。
「社員の構成変化が起こる中で、今後は社員一人ひとりの役割が拡大していくでしょう。そして、多様な人材が最大限に能力を発揮できる組織をつくることがますます重要になっていくと考えています。そのためにも、シニア層が持つ専門スキルの継承、若手の積極的な登用や効率的な業務プロセスへの変革などに取り組むと共に、従業員一人ひとりにとって働きがいのある組織をつくることが必要です」(藤沢氏)
ほかにも、社員の能力伸長や経験を拡大することを目的に、組織の枠を越えた挑戦の後押しとして社外副業を一部解禁。また、人事部では新たにタレントマネジメントシステムを導入し、社員が持つスキルをタイムリーに把握、共有してデータに基づく人事施策を策定できる体制の整備に着手した。
人生もお金も健やかに。信託銀行ならではの人的資本強化施策
では、具体的にどのような人的資本強化の取り組みを行っているのか。藤沢氏は「ファイナンシャル・ウェルビーイング向上」「エンゲージメント強化」「人材力強化」「組織力強化」の4つの施策を紹介した。
【ファイナンシャル・ウェルビーイング向上の取り組み】
まず、三井住友トラスト・ホールディングスならではの施策の1つが、社員のファイナンシャル・ウェルビーイング向上のための金融教育だ。同グループでは、ファイナンシャル・ウェルビーイングを「将来のライフイベントを適切に把握し、賢い意志決定によりお金に関する不安を解消させ、未来に向けて自律的に行動できる状態」と定めている。
「当グループでは、ファイナンシャルウェルビーイングの実感が高い社員ほどお客様や社会のウェルビーイングに貢献することができ、それによって企業価値向上につながっていくと考えています。そこで、当グループが有する投資ノウハウを社員に還元する金融教育を実施。一人ひとりのファイナンシャルウェルビーイングの向上に取り組んでいます」(藤沢氏)

【エンゲージメント強化の取り組み】
エンゲージメント強化を目指す施策としては、会社のパーパスと社員のやりがいが真正面から向き合うことで双方が成長できるという考えのもと、経営陣と社員が対話する機会を増やすことに力を入れている。
「取り組みの1つが、創業100周年を迎えたタイミングで実施した『100周年社員ワークショップ』です。これまでの100年の歴史を知るとともに、次の100年をつくっていくための挑戦・イノベーションをテーマに開催。ディスカッションを通して、社員に理解を深めてもらうきっかけになりました」(藤沢氏)
【人材力強化の取り組み】
人材力強化に向けた取り組みとしては、自律的なキャリア型人材の育成のため、社員にリスキリング機会を提供。社内大学「SuMiTRUST University」を設置し、業務知識に留まらず、社員一人ひとりが市場価値を高めていけるようにと大学と連携した研修プログラムを用意している。
その中には、信託会社としての基礎知識を身につけるプログラム、専門性を高めるプログラム、GXやDX教育、グローバルビジネススキルをはじめ、時流に合わせて変化していく未来適合力を高めるプログラムなどがあり、社員は自身のキャリアイメージに合わせて必要な学びを選択することができる。
「高い専門性を持ち、社外でも評価される社員が、働く場所として当グループを選ぶ。そういった関係性を目指して人材への投資を行っています」(藤沢氏)
【組織力強化の取り組み】
組織力強化という点では、DE&Iを重要な成長戦略と位置づけ、多様性を活かす風土づくりに取り組んでいる。その1つとして行っているのが、女性社員の活躍を後押しする「サポーター役員制度」だ。1年間にわたって専務や常務執行役員が自ら女性社員のメンタリングを行う制度で、開始から3年間で約160名が対象者となったという。
「キャリアアップに必要な知識、視座、人脈の習得をサポートすることで、女性社員のモチベーション向上につながっています。また、指導する役員自身が女性活躍に向けた課題を認識する機会にもなっています」(藤沢氏)
組織の多様性を育むうえでは、キャリア採用の活躍を後押しすることも重要だ。グループの中核である三井住友信託銀行では社員の約2割がキャリア採用で、その数は年々増加。そこで、入社後のフォローアップ研修やキャリア採用同士のネットワークを促進する取り組みなどを実施している。
また、メーカーやコンサルティング会社など幅広い業界の出身者、弁護士や理系博士号取得者など高度な専門人材を積極的に採用。組織に多様性が生まれたことで、今までになかった専門チームの立ち上げも実現できたという。たとえば、水素・電池・電力分野の技術者を中心に、実証フェーズから社会実装、普及フェーズまで一気通貫で推進する専門チーム「Technology Based Finance Team」を設立し、技術的な裏付けに基づいた社会課題解決に取り組んでいる。
社員の行動変容を促し、人的資本強化に取り組んでいく
社員のウェルビーイングの向上が社会のウェルビーイングの向上につながるという考えのもと、多角的に人的資本強化に取り組んでいる三井住友トラスト・ホールディングス。
人的資本強化の取り組みによって、2023年度に実施した社員意識調査では「満足度」が67.3%という結果に。「良好」の目安である60%を越えており、2019年以降継続して数値が向上していることからも取り組みの成果が出ていることがわかる。
一方で、パーパスへの共感、理解は社内で広まっているものの、パーパスに基づいた行動変容ができていない社員が一定数いることも明らかになった。
「人材力、組織力を向上するためには社員の行動変容が必要不可欠です。経営としてもこの点を課題と捉え、リスキリングをはじめとして行動変容を促す施策を今後も継続的に行っていきます。また、より働きやすい会社を目指して業務プロセスや働き方などを今まで以上に整備し、社員のウェルビーイング向上に取り組んでいきたいと考えています」(藤沢氏)
※記載されている情報はインタビュー当時のものです。
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