人事のスキルアップに必要なものとは?「プランニング」「オペレーション」「ビヘイビア」の3領域から考える
2025.09.18
目次
人事のプロフェッショナル青田努氏に、読者の皆様から寄せられた「人事」に関するお悩みに回答いただく連載企画。
UNITEにて募集したお悩みの中から各回ごとにピックアップし、人事の方が直面している人事業務におけるお悩み、自組織のお悩みや人事キャリアのお悩みなどにご回答いただきます。
Profile

青田努 氏
Cast a spell合同会社 代表
リクルートおよびリクルートメディアコミュニケーションズに通算10年在籍し「リクナビ」の学生向けプロモーション、求人広告の制作ディレクター、自社採用などを担当。その後、ドリコム、アマゾンジャパン、PwCでの人事マネージャーを経験。2015年からは人事向けメディア「日本の人事部」にて、人事・人材業界向け講座、人事の交流会・勉強会組織などの企画・立ち上げ・運営に携わる。2017年にLINE入社。人材支援室副室長を務めたほか、マネジメント層の成長支援プロジェクトのリード、採用・タレントマネジメント関連のさまざまなプロジェクトを推進。LINE在籍中の2021年にCast a spellを設立。「採用を体系的に学ぶ会」、「組織行動論おすそわけ勉強会」、3600人超の匿名相談コミュニティ「人事のへや」などを運営。
採用担当者が伸ばすべき3領域のスキルとは?

しんそつさん、ご質問ありがとうございます。
採用担当者の方々からご相談をいただく機会が多いのですが、新卒採用ですと1年目で既存業務のキャッチアップ、2年目で独り立ち、3年目からは採用業務改善やさらなる自己成長を考えるといったステップを踏むケースが多いように思われます。
2年目まではやることが明確であり、成長実感もあります。一方、3年目からは世界が広がるぶん、何をするべきか、何を目指したらいいかが見えづらくなりますよね。そこで紹介したいのが、採用担当者が開発するべき能力を3つの領域に分けて考えることです。

一部の企業では既存業務をAIで代替するために新規採用を抑制するというケースも出てきていますが、多くの企業にとって人手不足は依然として深刻な問題です。
単にそっけない求人票を出し、事務的な選考を行うだけでは、自社にフィットする人を採用することは困難です。自社が求める人材要件を設定し、選考を通じて的確に見定め、気持ちよく入社を決めてもらうためには、採用担当者の高度な能力が必要不可欠といえるでしょう。
具体的には採用担当者自身が戦略立案(プランニング)、実行および実行管理(オペレーション)、そして対人行動(ビヘイビア)といった多様な領域におけるスキルを磨き、実践することが求められています。
ここからは採用担当者に求められる能力を「プランニング」「オペレーション」「ビヘイビア」という3つの領域に分解し、それぞれの特徴や必要とされるスキルについて解説いたします。
戦略的採用を実現するための設計力「 プランニング」
採用活動における最初のステップは、全体設計。すなわちプランニングです。この領域は自社が必要とする人物像の明確化、市場の動向を踏まえた採用戦略の立案、選考プロセスの設計などが含まれます。プランニング能力を向上させることで、単なる人数合わせの採用ではなく、自社の中長期的な成長戦略を描くことができるのです。
採用活動には現場の方々のアクションを含めた「膨大なDo」が存在しています。これらのDoをより効果的なものとするには「練られたPlan」が必要です。
どのような人材が必要かを定義し、その実現に向けた具体的なアクションプランを策定するスキルを身につけましょう。
プランニング系のスキルは以下の表のように整理できます。

プランニングには高度なファクトの整理・現状把握・理解が求められます。そのためには、自社、業界、部門の各レイヤーにおける情報の整理が重要です。
また、その上で必要となるのが問題解決にいたるまでのアクションの設計です。具体的には問題特定、計画と算段、リソース確保に関する知見が求められます。これらのスキルが不足していると、良質なプランニングは実現しません。
それぞれのスキルをレベルごとに整理するのがおすすめです。上記のルーブリック(表)では5段階に分けていますが、現状のご自身のレベルについて上司と相談しながらすり合わせていきましょう。
次のレベルに進むためにどんなスキルを身につけるべきかを可視化する。これにより、不安にとらわれずにキャリアを前進させることができるでしょう。
膨大なDoを実現するための「オペレーション」
プランニングを行ったのちに求められるのが、実際の採用活動をスムーズに進めるための「オペレーション」のスキルです。具体的には採用の現場における実務処理やプロジェクトマネジメント能力を指します。
重要な柱となるのは「オペレーション設計・改善」「コアオペレーション」「オペレーション管理」の3点です。

オペレーション設計・改善
近年ではAIを中心とするテクノロジーの活用により、採用業務の効率化・高速化が見込まれます。そのため、テクノロジーやそれらを活用したサービスについての学習や知見が採用担当者にとっての強みとなります。先述の通り、採用活動においては膨大なDoやオペレーションが存在するため、限られたリソースを最大限に活用することは採用担当者の責務です。
「テクノロジーで代替できること」と「人間が本当にすべきこと」をいま一度見直し、自社の採用活動の生産性を高めていくスキルは採用担当者としての市場価値向上にもつながるはずです。
コアオペレーション
採用活動は、ターゲット設定 →ソーシング(メッセージ設計・ブランディング・マーケティング・チャネル選定) →適切に見立てる(選考設計・選考実務) →クロージング(アトラクト・オファー・交渉)というおもに4つのプロセスで進んでいきます。
各プロセスにおいて数値を改善していくことが重要であり、その成果が採用担当者にとっての分かりやすい価値となります。
また、レイヤーが上がるほど、他の採用担当者の成果を向上させられるサポート、ナレッジ共有、仕組みづくりが求められていくでしょう。
オペレーション管理
採用担当者は自身の担当しているポジションにおける数値や進捗・実情を把握し、改善していく必要があります。そのためには適切な項目をKPIとして選定し、問題特定や目標管理に活かしていかなければなりません。その前提として、「分析に耐えうるデータ取得」も大切な役割となってきます。データによっては後で取得しづらいものもありますので、採用活動のどのプロセスでどのように記録・取得していくかというデータ設計力も問われるでしょう。
立ち振る舞いもプロであれ。「ビヘイビア」
採用担当者に限ったことではありませんが、信頼を得るための立ち振る舞いもプロフェッショナルとして欠かせない要素です。「十分な成果を上げているのに、なぜか昇進させてもらえない」と感じている方は、この領域のスキルが不足している傾向があります。
採用担当者の立ち振る舞いは、一つひとつが採用チーム内、現場の方々からの信頼に繋がります。十分な信頼が得られていないと、重要な業務は任せづらいというのがマネジメントの真理でしょう。採用担当者として更なるレベルアップや昇進を目指すためには、日常的な振る舞いを改善していく必要があります。
ビヘイビアの領域では、以下の5項目が重要な柱となるでしょう。

採用の現場では、多様な人との接点が求められます。
候補者に対しては企業の魅力を伝えて入社意欲を高めると同時に、不安や疑問にも真摯に対応することが必要です。加えて、現場社員や面接官・経営層に対しては、採用状況の報告や課題提起を行い、戦略的な採用への理解を得る必要もあります。
また、採用系のサービスベンダーの方々と良好な関係を築き、自社の採用活動へのコミットメントを高めてもらうスキルは、ぜひ身につけておきたいところです。
これらすべてに共通するのは「人との関係性や信頼を築く力」であり、それこそがビヘイビア系スキルの中核となります。
3つのスキルのいずれかが欠けていると、採用は成功しない
プランニング、オペレーション、ビヘイビアの3領域は、どれか一つだけが優れていれば良いというものではありません。それぞれが相互に関係し合い、採用の質と成果を支える土台となっていきます。
たとえば、優れたプランがあっても、それを実行するオペレーション力が不足していれば採用は進みません。これらが上手く進んだとしても、候補者の方との関係構築がうまくいかなければ内定承諾には至らないでしょう。反対に、現場での対応力があっても長期的視点でのプランニングが不十分であれば、採用の成果は一過性に終わってしまいます。
採用担当者として成長していくには、自分がどの領域に強みを持ち、どの領域をさらに伸ばすべきかを明確にする自己認識が重要です。そして、日々の業務の中で振り返りと学びを重ねながら、3領域すべてにおいてバランス良くスキルを高めていく必要があります。
人事担当者の成長マップの活用法
今回のような「人事担当者の成長」に関するご質問は、採用チームのマネージャーの方からいただくこともあります。特に、採用担当者としての経験が十分でない状態でチームを預かることになった際、メンバーをどのように支援していけばいいか悩まれることも多いでしょう。そんな時、今回ご紹介したルーブリック(表)は大いに活用できるのではないでしょうか。
もちろん、表は自社なりにアレンジしていただいてかまいません。5段階ではなく4段階のレイヤーに区分したり、スキルの項目もアレンジしていただいても結構です。自社で運用しやすいよう今回の例をベースとしてブラッシュアップしていただくことをおすすめします。
また、採用担当者の成長を支援するためのガイドとしてだけでなく、自社の等級制度と連動させ「昇進・昇格」におけるガイドとして、あるいは採用担当者を中途採用する際にどの等級で迎え入れるかを検討するためのガイドとしても機能します。
多様にアレンジできるルーブリックですので、ぜひ自社の状況に合わせてご活用ください。
※記載されている情報はインタビュー当時のものです。
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