採用のミスマッチをなくすために面接官が取り組むべきポイントは?
2025.12.04
目次
人事のプロフェッショナル青田努氏に、読者の皆様から寄せられた「人事」に関するお悩みに回答いただく連載企画。
UNITEにて募集したお悩みの中から各回ごとにピックアップし、人事の方が直面している人事業務におけるお悩み、自組織のお悩みや人事キャリアのお悩みなどにご回答いただきます。今回は採用に関するお悩みです。面接官の間でどのように求める人材像を一致させていくかや、カルチャーミスマッチを防ぐための方法など、具体的なノウハウを青田さんにお答えいただきます。
Profile

青田努 氏
Cast a spell合同会社 代表
リクルートおよびリクルートメディアコミュニケーションズに通算10年在籍し「リクナビ」の学生向けプロモーション、求人広告の制作ディレクター、自社採用などを担当。その後、ドリコム、アマゾンジャパン、PwCでの人事マネージャーを経験。2015年からは人事向けメディア「日本の人事部」にて、人事・人材業界向け講座、人事の交流会・勉強会組織などの企画・立ち上げ・運営に携わる。2017年にLINE入社。人材支援室副室長を務めたほか、マネジメント層の成長支援プロジェクトのリード、採用・タレントマネジメント関連のさまざまなプロジェクトを推進。LINE在籍中の2021年にCast a spellを設立。「採用を体系的に学ぶ会」、「組織行動論おすそわけ勉強会」、3600人超の匿名相談コミュニティ「人事のへや」などを運営。
採用における「面接官」の目線を揃えるためには?
ささたろさん、匿名さん、ご質問ありがとうございます。おそらく同様の対策が突破口になるかと思いますので、お二人まとめて回答させていただきます。
まず、ささたろさんのケースですが、「自走できる人材」と定義したものの、おそらく面接官同士でその人物像や人材要件についての解釈が一致しておらず、そのような状態になっているかと推察します。また、匿名さんのケースも背景で同様のことが起きているのではないかと思います。
このようなケースでは「人材要件のブレイクダウン」「前後のつながりの強化」の2点について見直してみると良いかと思います。
人材要件をブレイクダウンし、面接官の間で「共通言語」を持つ
まず「自走できる人材」について、面接官の方々に各自が思う定義を書いてみてもらってください。「指示を待たずに自律的に動ける人」と書く人もいれば、「自ら課題を設定して物事を進められる人」「指示以上の付加価値を生み出すことができる」など書く人もいて、解釈がさまざまに分かれていることが明らかになると思います。面接官のバックボーン、つまりはこれまでの経歴や育ってきたカルチャーはさまざまであり、同じ言葉でも思い浮かべているものが異なるということは多々あります。
そのような場合は、自社なりの「自走できる人材」をブレイクダウンして、面接官全体に共有し、認識のばらつきをおさえる必要があります。たとえば「自走できる人材」であれば以下のように整理できるのではないでしょうか。ここでは「自走できる=自走を阻害する要素を持たない」と定義し、阻害要因がないかどうかを選考を通じて確認していくことを目指します。

なお上記の整理はあくまでも一例であり、自社内でフィットする定義や表現にアレンジいただいてもかまいません。大事なのは「定義が明確」であり、面接官の間で「共通言語化」されていることです。ぜひ一度試してみてください。
前後のつながりの強化によって判断の精度を上げる
ささたろさん、匿名さんの会社では2次面接でお見送りとなった際に、その理由が1次面接官に共有されていますでしょうか?もし共有されていなければ、1次面接官は自分が合格とした候補者が結局良かったのかそうでなかったのか答え合わせができず、合否判断の精度が改善されません。
その結果として、お見送りとなる候補者を2次面接に送り続けたり、本当は2次面接で合格となる候補者を1次面接でお見送りにしてしまうことも考えられます。前者は「生産性低下」を引き起こし、後者は「機会損失」となってしまいます。どちらも採用活動では避けたいところです。
そのために必要となるのは「前後のつながりの強化」です。具体的には以下のような施策となります。

これらは手間のかかる施策となりますが、面接において大きな問題が発生している場合は取り組んでみることをおすすめします。しっかり取り組めば効果が出やすい施策ですので、ぜひ参考にしてください。
カルチャーフィット=バリューフィット

匿名さん、ありがとうございます。カルチャーフィットは面接のお見送り理由として使われやすいですよね。こうしたケースにおいては、「カルチャーフィット」という概念の捉え方が面接官の間で異なっている可能性があります。
まず勘違いしてはならないのは、カルチャーフィットする人は単なる「自社にいそうな雰囲気の人」「なんとなくノリが合う人」のことを指すわけではありません。
もちろん、これらを採用基準としても良いのですが、これらをもって「カルチャーフィットする」とは言えません。カルチャーフィットとはずばり「バリューフィット」のことです。
バリューとは「その組織が大切にしている価値観・行動指針」のことを指します。つまり、何を良しとし、どう行動することを称賛・評価するかを示すものです。カルチャーとは従業員個々人の行動や判断の集積・蓄積により醸し出される空気のようなもので、いいカルチャーを作っていきたい場合は、まずはそれを実現させるバリューを策定し、従業員に浸透させていく必要があります。
つまり、「カルチャーフィット=会社のバリューへのフィット」と定義するなら、採用面接でやるべきことは「候補者の価値観や意思決定の根拠を明らかにし、それが会社のバリューと整合しているかを見極めること」になります。
カルチャーに合いそうか、合わなさそうかで判断のブレが大きいのであれば、まずここまでに述べたことを面接官オリエンテーションなどを実施していくことで、面接官の方々に理解していただく必要があります。面接においては一例として以下のような進め方をしていくと良いでしょう。
バリューの行動化および質問設定が面接準備のポイント
まず面接前に、会社のバリューを抽象的なスローガンではなく、行動レベルでどう表れるかに翻訳していくことが重要になります。たとえば「チャレンジを恐れない」「チームワーク」「顧客中心」をバリューに掲げている会社であればこのようになります。

上記のように整理したうえで、面接では「バリュー」に沿った対話のアプローチが必要です。自社のカルチャーにマッチしているかを判断するために「具体的な状況→行動→結果→自己評価」という一連のプロセスに沿って深掘りしていきます。直接的にバリューを軸として質問する方法も併用すると効果的でしょう。
また、カルチャーフィットは「好ましい一致」を探すだけでなく、不一致(アンフィット)を明確にすることも重要になります。候補者のこれまでに経験したミスマッチを聞くことも、有効な判断材料です。

補助的な手法(面接外でのカルチャーフィット検証)として以下の方法もありますのでぜひ検討してみてください。
①社員座談会・カジュアル面談:フランクな対話を通じて相互理解を深める
②ワークサンプルテスト:実際に実務に取り組んでいただき判断や優先順位を観察
③リファレンスチェック:日常的な実際に行動についてこれまでの上司・同僚視点で確認
「カルチャーマッチ潔癖症」はNG。「カルチャーアド」の意識を持つ
カルチャーフィットは重要ですが「同質性の追求」と混同しないようにしましょう。 文化への共感と、多様性への受容は両立可能ですので、少しでも現状のカルチャーにフィットしない「カルチャーマッチ潔癖症」にならないように注意する必要があります。「この候補者の方に入社いただくことで、カルチャーの幅を広げてくれるのではないか」と期待して採用するカルチャーアド(Culture Add)という視点も重要です。
既存の組織文化に「新しい価値観・視点・行動様式」を加える人を採用・評価する考え方、つまり「現状の文化に合う人」ではなく、「文化を進化させてくれる人」を歓迎するという発想も大切にしながら、採用活動を通じた組織開発を目指していけると良いでしょう。
※記載されている情報はインタビュー当時のものです。
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