【テレビ神奈川】トップ自ら先導し取り組む組織変革

神奈川県の独立放送局である株式会社テレビ神奈川。2022年には開局50周年を迎え、「『お役に立つテレビ局』『なくてはならないテレビ局』として地域社会や街づくりに貢献し続ける」をパーパスに掲げ、近年は放送外事業にも取り組む企業となっている。 

コロナ禍の激動の中、2020年に代表取締役社長に就任した熊谷典和氏に、自身の経験に基づいた組織づくりのポリシーや取り組みの内容を伺った。 

 

Profile

熊谷 典和 氏

株式会社テレビ神奈川 代表取締役社長

コロナ禍で社長就任以降、まず取り組んだのは「自社を知ること」による人材育成

——組織づくりの取り組みに動き出したきっかけはどのようなことだったのでしょうか? 

私の経験に基づきます。私は1994年にテレビ神奈川(以下tvk)に入社してから約30年になりますが、制作の経験が長かったです。tvkコミュニケーションズという関連会社に出向するなど、tvkの中だけではなく、他の関連会社の仲間と一緒に物事を進め、ものを作り上げてきました。そういう意味では、他の同期とは全く違う歩みをしてきたと思います。この経験を経て、tvk一社だけでは良いものは作れないということを強く実感してきたことが、自分の経験上すごく大きいです。 

無我夢中で番組を作る中、関連会社へ兼務出向したタイミングで、tvkを俯瞰的に見ることで次第と経営側に立った考え方をするようになりました。客観的に自社の強みが非常によく見えてきたのです。そこで社員も、自分のチーム・部署だけではないところと繋がりが持てたり話ができたりする機会があれば、自社の強みが見えてきて、働きがいも向上していくのではないかと考えました。 

ただ、私が社長に就任した2020年当時は、コロナ禍の最中であり、社内イベントもできない状況でした。そんな中、最初に取り組んだのは「tvkだけではないグループ一体となった人材育成」でした。この先、「社員が自分の会社をもっと好きにならないとどうにもならない」と考えたのです。 

しかし、2020年当時は、決して自社の仕事を全て把握できている社員が多いとは言えませんでした。そこで、まずは自分の会社のことをよく知るというところからスタートしました。 

組織づくりにおいて「知り」「関心を持つ」ことを最重要視 

——社員の皆さんが自社のことを知ることが、育成やエンゲージメントにもつながると考えられたのですね。具体的に重視したポイントはありますか? 

私が組織づくりをする上で大事にしているのは「関心を持つこと」です。テレビ局は当然クライアントやスポンサーがいらっしゃるので、その方々に無関心になることはないのですが、自分や自部署の業務に集中するあまり、他部署への関心や全社を見渡す視点に欠けがちです。 

 

——「知る」「関心を持つ」ということ重視されている背景を教えてください。 

今までの私の経験も踏まえて、「コミュニケーション力」「提案力」「プロデュース力」の3つの力を磨いてほしいということは、社員によく話しています。そして、この中でも「コミュニケーション力」が土台にあると考えており、社内に対する関心がこれにつながります。 

例えば、テレビ業界に限らず「提案する」という場面はよくあると思います。弊社では、上司に企画書を上げた際に却下されると、「どこを改善すれば良い提案になるのだろうか」と考える前に、上司と意見をすり合わせることを諦めてしまう人が多いと感じました。 

私は、この背景には「コミュニケーション力の低さ」があると思っています。自社が持っているツールや人脈を知らないがために、それを掛け合わせるという発想ができず、結果として良い提案に繋がらないのです。また、上司・部下共にコミュニケーションが十分であれば、「こうすると通しやすいだろうな」という戦略が立てやすかったり、「部下はこういうことがしたいのだろう」という理解がしやすかったりします。 

こうした意味で、コミュニケーション力が土台にあり、多くの人と接点を持って様々なアイディアを創出することが提案力の向上につながり、周りを巻き込んで進めるプロデュース力にもつながる。こうした考え方が、成果レベルが上がることに直結すると思います。

社内を「知る」ため、組織づくりに向けての取り組みに着手 

——組織づくりのため、なぜUniposの取り組みを始めたのでしょうか。 

先ほどから申し上げている「知る」「関心を持つ」きっかけになると考えたからです。 

自分ではコミュニケーションがとれていると思っていても、社内で知らないことはたくさんあると思います。例えば、若手社員には若手社員にしかない人脈や得意なことがあるはずです。弊社ではSansanという名刺管理・営業DXサービスを使っていますが、Sansanを見て実際に「若手がこんな繋がりを持っているのか」と驚いたことがあります。こうした資産を社内で共有し、知ることができれば、自分の仕事にも活用できるのではないか、と考えています。 

Uniposは、全社員が見ることができるオープンな場所でポジティブなフィードバックを送ることができます。Uniposのタイムラインを見れば、社内で誰がどんなことをしているのか、細かいやりとりを知ることができるため、お互いを知り、お互いの持つ資産を活用するためのきっかけになります。実際に私も、Uniposを使うことで意外な繋がりを知ることがたくさんありました。 

ちなみに、弊社ではtvkらしい施策として「感謝のカタチっぷ+」という名前でUniposを運用しています。開局50周年を記念したキャッチフレーズである「感謝のカタチ」から、浸透プロジェクトメンバーを中心に考えてくれた名前です。 

 

——導入いただいてから2年ほど経ちますが、全社を巻き込む施策であるUniposの取り組みにおいて、特に苦労されたことをお聞かせください。 

色々な考え方の社員がいるため、最初から全社員が導入目的を理解し、活用できることは難しいと考えました。そこで、まずは管理職が100%利用してもらうことを目標におきました。 

正直、当初は苦労しました。中には全く使わない管理職もおり、次世代の経営候補者である管理職が社としてやろうと決めたことに対して参加しない、踏み出せないということには焦りを感じたこともありました。 

Uniposに限らず、「とりあえずやってみよう」という感覚がない人たちは、正直不安だなと思います。それこそ無関心です 

 

その課題を解決すべく実施した管理職向け勉強会では、Uniposのカスタマーサクセス・園部さんに設計から入っていただきました。 

勉強会では、トップである私から組織の目指す理想や現状の課題——どこに取り組んでいかなければいけないのか、そこで管理職にどう取り組んでほしいのかを伝えました。例えば、我々の目指す「成長・挑戦を後押しする」風土のためには、相手に伝わる形で「認めること」「前向きな言葉で伝えること」がポイントになることを伝え、具体的な声かけ例もインプットしました。 

また、これまで自由参加としていた利用方針を、管理職は「マネジメントの役割の一環として利用する」と見直しました。これは部下とのコミュニケーションに関する管理職のスタンスを示すための大きな変更の一つです。 

このように、経営陣自ら変わろうという姿勢を示し、語り続けることで、少しずつ認知が変わってきたように感じています。 

社員の一つ一つの行動変容が積み重なり会社が変わる 

——まさに「組織のカルチャーをつくる・変える」という取り組みの最中と思いますが、必要な時間軸についてはどう考えていらっしゃいますか? 

カルチャーづくりには、たっぷり時間がかかると考えています。 

当社はグループ会社含めて約300名とそこまで大きい組織ではありませんが、それでも全社員が経営の考えていることに賛同していただくのは難しいです。ただ、経営が何を考えているのか、想いを伝え続けることが非常に大切です。 

色々な外部要因がある中で、「明日からこうすれば変わる」という特効薬はありません。組織を変えるのには時間がかかりますが、しっかりと経営陣から話をして、少しでも社員の考え方が変われば、行動が変わり、その積み重ねで会社が変わってくるだろうと思っています。 

 

——tvk社では、施策実行後に良い変化はありましたか? 

一つは、管理職の意識変容があります。2023年11月現在、管理職のUniposアクセス率(※月に1回以上アクセスしたメンバー率)は100%です。全員が他メンバーに対して興味関心を持ち、ポジティブなアクションを実行している状態といえます。多少時間はかかりましたが、管理職が信頼に応えてくれているという嬉しさがあります。 

管理職の、売上など会社の数字に対する意識も変わってきたと思います。例えば管理職勉強会の際に会社の売上について管理職に質問したのですが、正しく答えられない人がいました。これは自社に対する無関心です。今では会社の数字を聞かれて答えられない管理職はほぼいません。こうして意識が変わってきたのも、日々会社の数字を知る重要性を伝え続けた成果だと捉えています。 

まずはお互いを知り、興味を持つことを大切にしていますので、アクセスして見てくれていればいいと考えており、そのことから弊社ではUniposの施策KPIとしてアクセス率をウォッチングしています。現在、弊社のUniposのアクセス率は80%ほど、つまり常に8割の社員がタイムラインを見ています。 

経営者として「伝え続ける」ことを怠ってはいけない 

——熊谷社長が組織づくりにおいて大切にされていることを教えてください。 

私や管理職がどれだけ伝えても、現場に響かないことはあると思います。しかし、言い続ける・理解してもらう努力をする、ということは決して怠ってはいけないと考えています。 

Uniposも長く継続して使って効果が出ているように、組織づくりは一朝一夕では成しえません。言い方や例を変えて角度を変えながら伝え続けることが重要ですし、しつこくていいのではないかと思っています。これが経営者や管理職の役割だとも考えています。 

 

——最後に、今後こうした組織を目指していきたいという理想像はありますか?  

「自分の会社に誇りが持てる組織」を目指しています。当社のパーパスは「お役に立つテレビ局」「なくてはならないテレビ局」として地域社会や街づくりに貢献し続けるということですが、自分の会社に誇りを持てないと、このパーパスの意味はありません。 

例えば、当社ではハウジング事業も行っており、「横浜イングリッシュガーデン」というバラ園の経営をはじめ、テレビ局が今までやってこなかったような先進的な事業をグループとして行っています。家族や友人に「これもうちがやっているんだ」と誇れるような、たくさんの事業をやっているのです。 

こうした社内の取り組みや事業を知ることが、自社グループへの誇りを持つことやエンゲージメント向上につながるのではないかと考えています。 

 

2021年には手挙げ制で若手プロジェクトを組成し、長期ビジョンの策定をはじめとする会社全体の取り組みに参加してもらっています。長期ビジョンは、彼らの表現で、彼らの目指したい未来を言語化し、それをどうやって目指すかを考えてもらいました。経営陣の私たちとずれは全くありません。 

以前は「若手だけじゃ何もできない」という風潮があったかもしれませんが、今では若手中心に「こういう誇れる会社にしたい」と意気込んでいます。 

また、以前の中期経営計画は担当役員が中心になって策定しており、なかなか現場に浸透しませんでした。しかし、現在は副部長クラスの管理職層も一緒になって「どういう会社にしたいか」を盛り込んだ中期経営計画を作っています。 

こうした一つ一つの取り組みが実を結び、社員が誇りを持てる会社を作っていければと思います。 

おわりに

熊谷社長には、自身の経験から成る組織づくりに対する姿勢・想いを、熱量を持ってお話いただいた。「まずは知り、関心を持つことから始める」「経営者として自ら伝え続けることが重要」など、カルチャーをつくる上でのエッセンスが多く含まれていた。 

tvkでは中期経営計画のコンセプトとして「視聴者に最大限の価値を届けられる、地上波にとらわれない総合コンテンツ企業をめざす3年間」を挙げ、新たなビジネスの創出に取り組んでいる。こうした部分からも、新しいことに挑戦し形にするtvkのカルチャーが見てとれる。そして、社員同士で興味を持ち称賛し合うカルチャーが、この挑戦を支える土台となっている。 

今後も、神奈川県の地域に根差したテレビ局としての新たなチャレンジに注目したい。 

※記載されている情報はインタビュー当時のものです。

この連載の記事一覧

UNITE powered by Uniposをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む