【実践事例】課題解決のカギは「仕事が個人に提供できる3つの『感』」

2009年の創業以来、デジタルモノづくりに従事し続けている、株式会社ガラパゴス。

「1年間で従業員数が2倍以上」になるほどの急成長を遂げており、年間の採用応募者数はなんと、7,000名越え!

その成長を支える組織づくりの秘訣とは何なのか?

代表の中平健太氏と人事総務部・人事企画チームマネージャーの千葉洋祐氏の話から、ガラパゴス流組織づくりを紐解いていく。

Profile

中平 健太 氏

株式会社ガラパゴス 代表取締役

 

早稲田大学理工学部卒業後、インクス(現ソライズ)にて大手製造メーカーのプロセス改善コンサルティングに従事。その後2009年にガラパゴスを創業。

100を超える大規模スマホアプリ開発を通して、デザイン産業のアナログな構造に起因するペインを痛感。ペイン解消に向けて、AIを活用した広告クリエイティブ制作・改善サービス「AIR Design」(https://airdesign.ai/)をリリース。

ICC スタートアップ・カタパルト 準優勝、G-STARTUP 優秀賞、B-SKET DemoDay MVT(最優秀チーム)、JSSA 最優秀賞、JAPAN STARTUP SELECTION 2021「ベスト経営チーム賞」受賞、Mizuho Innovation Award 受賞、ICCサミット KYOTO 2022「カタパルト X B2Bソリューション特集」優勝。

千葉 洋祐 氏

株式会社ガラパゴス 人事総務部 人事企画チームマネージャー

 

筑波大学大学院数理物質科学研究科を修了後、2010年にマルハニチロ株式会社に入社。

研究開発部門にて味の可視化や代謝物解析などを約8年、その後人事部門にて組織開発や働き方改革などに約3年従事。

2021年4月にガラパゴスに入社し、現在は人事企画チームにおいて人事労務や各種制度設計など、全社の仕組みづくりを推進。

なぜ、ガラパゴスは組織課題に向き合うことにしたのか?

―――急拡大する組織、経営陣の覚悟とコミットメント

ガラパゴス社が、組織課題に本格的に取り組み始めたのは、2021年4月のこと。

祖業であるアプリの受託開発業務から、AIR Designという新事業の拡充を図っていくとともに、上場を目指し組織を拡大させていこうというフェーズ。

当時、組織全体の規模は80名。まさに「100人の壁」を越えるタイミングだった。

また、事業部ごとに異なるMV(ミッション・バリュー)が存在し、事業部ごとの雰囲気が異なるという課題も抱えていた。

代表の中平健太氏(以下、中平氏)は、自身の会社員としての経験も踏まえながら、組織づくりについてこう語る。

「会社が人を選ぶ時代は終わり、今は人が会社を選ぶ時代。経営者は『自分はこの会社で働きたい?』ということを自らに問うて、組織づくりをしていくことが求められているのではないかと思っています。

どうしても経営者って、主語が『会社』になりがち。その主語を『自分』置き換え、自分が求職者だったらこういう会社がいいなと素朴に思うことをいかに制度に落とし込めるか?ということをいつも考えています。」(中平氏)

組織づくりに関して非常に重要な要素である、「経営者の覚悟とコミットメント」。

中平氏の言葉からも明らかなように、それがガラパゴスにはあった。この覚悟とコミットメントこそ、組織づくりを推進させる一つの重要なパーツだったのではないだろうか。

組織づくりに投資していくという覚悟を持った、中平氏をはじめとする経営陣。その覚悟の表れの一つが、「より社員が働きやすくする土台となる組織づくり」を支えるための人的投資だ。

組織課題に本格的に取り組む体制を整えるために採用されたうちの一人が、人事企画チームマネージャーとして活躍している、千葉洋祐氏(以下、千葉氏)。

千葉氏が採用された2021年4月当時は、まだ人数も少なく人事はコーポレート部門の一つという位置づけだったという。

そこから約1年かけて人的投資と組織体制の変更を進め、2022年6月に採用などの機能とは独立した人事企画チームが組成され、現在に至る。

また、覚悟は人的投資にとどまらず、会社全体へ発信するメッセージにも現れている。

千葉氏はこう語る。

「中平さんが、『組織をより良くしていくために協力をお願いしたい』というメッセージを都度都度発信してくれたんですよ。これがメンバーの理解促進につながったのかなと。経営者・ボードメンバーからの『組織の取り組みに力入れてますよ』という言葉があったからこそ、様々な人事施策がうまく進んだのかもしれないですね。」(千葉氏)

こうした経営陣のバックアップも受けながら、2021年4月に千葉氏をはじめとする人事メンバー3名から組織課題への取り組みが本格的に始まった。

人事施策、始まる。鍵は「3つの『感』」

―――はじまりは、「目指すべき方向」を定めることから

まずは、人事チームとして目指すべき方向(人事ポリシー)を定めることからスタート。

「『人事として何を目指すべきか、どんな会社を目指すのか、会社のミッション「プロセスとテクノロジーで人をよりヒトらしく」をどうやったら実現できるんだっけ?』ということを考える中で、ミッションを半分に分けて考えてみたんです。

まず、『プロセスとテクノロジーで』という部分。ここから、『曖昧な人事領域っていうところから誰が見てもわかりやすいとか、納得感があるような仕組みがある科学的な人事にしたいよね』という考えが生まれました。

また、後半の『人をよりヒトらしく』というところから、『よりヒトらしい働き方って何だろうね』と考えました。

そこで出てきた『労働環境に不安とかない方がいいよね』とか『成果に見合った報酬がちゃんと払われるべきだよね』とか『みんなから感謝されたり、やりがい感じられたらいいよね』『それでさらに活躍できたらいいよね』などの要素から『安心して長く活躍し続けられる会社を作る』 という部分ができました。」(千葉氏)

そうした議論の末、約3カ月間かけて、作成されたのがこちら。

「日本一科学的な人事で、安心して長く活躍し続けられる会社を作る」

このポリシーを拠り所として具体的な施策が進んでいく。

―――自社の現在地を客観的・正確に把握する

ポリシー策定後に取り組んだのが、理想状態(=人事ポリシーの実現)と現状のギャップの整理だ。

より定量的に現状を把握するために組織サーベイ(wevox)を導入し、サーベイ数値も参考にしながら、課題を上図のように整理した。

―――実行施策を貫く「3つの『感』」

人事ポリシーを実現するためのキーワードとして、ガラパゴスでは「仕事が個人に提供できる3つの『感』」を定義。

「社員が長く活躍するにはどんな要素が必要か?」について、約1-2ヶ月かけて代表の中平氏と人事で議論していく中で、自然とこの3つに整理されていったという。

「成長感」

「貢献感」

「報酬上がる感」

この3つのキーワードを軸として、これまで実施してきた施策の全体像が下図である。

軸に沿った施策ではありつつも、優先度は決めすぎず、その時々の状況に応じて最適な施策を実行し続けている。

次章からは、3つの感を軸とした施策について一つ一つ読み解いていく。

「3つの『感』」それぞれに基づく施策

―――「成長感」を支える、ガラパゴスのマネジメント術

「成長感」を最大化させるために、「丁寧なオンボーディング」「1on1型化」「マネジメントスタイル型化」を実施。

中でも特徴的なのは、マネジメント・1on1の教科書を作成していることである。

中平氏は、作成の背景について、こう語る。

「いきなり『マネジメントして!』 と言われても、学校で学んだこともない、本を読んでもピンとこない、『いや、分からないよ…!』 となってしまうのが、急にマネージャーになった人にありがちな悩み。それを解消するために、ガラパゴス独自のマネジメントの教科書を作成することにしました。」(中平氏)

経営陣と外部から招いたプロのファシリテーターが参加する毎週1.5時間のMTGの中で、「ガラパゴスの考えるマネジメントの役割とは何か?」から考え、3ヶ月で完成させた。作りっぱなしで終わるのではなく、人事がインストール研修も実施している。

マネジメント方法を定義しただけで満足しないのがガラパゴス流。

「データもない状態で、手探りでマネジメントを進めるのは難しい」という考えのもと、サーベイツール(wevox)を導入。

1on1で定性情報を可視化しつつ、サーベイで客観的に数値化・可視化。この二つを組み合わせることで、チームの状態を可視化し、組織の改善アクションを実行するサポートとする狙いがあるという。

また、1on1定着のために、タレントマネジメントツールを使用して、1on1の実施有無の可視化も並行して実施している。

人事ポリシーの「科学的な人事」に通ずる、徹底した数値化・可視化・型化が、「成長感」を支えている。

※後編はこちらから

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