【後編】変革に挑む老舗企業が実践した「組織を変える法則」

創業113年、鹿児島に本社を構え、エネルギー事業を主として多角的な事業を展開する小平株式会社(以下KOBIRA)。 

前編では、カルチャー変革に取り組む前の課題感や、実際に行った取り組み内容について語っていただいた。後編である本記事では、二人三脚で組織変革を進めてきた代表取締役社長 小平勘太氏、副社長取締役 CHRO 池田亮平氏に引き続き話を伺い、リーダーシップのあり方や、二人のリーダーシップの役割分担についてお話いただいた。 

Profile

小平 勘太 氏

小平株式会社 代表取締役社長

池田 亮平 氏

小平株式会社 副社長取締役 CHRO

蓄積する組織課題を解決するため、「社長の右腕」として入社 

——小平社長と池田様は、これまで二人三脚でKOBIRAの組織変革を進めてこられました。お二人の出会いについて聞かせてください。 

池田氏:大学時代、二人ともAIESECという国際学生団体に所属していたのですが、私は東京大学、小平は京都大学で、当時は接点がありませんでした。卒業後はお互いに違う地域で活動していたのですが、私が2021年にIターンで鹿児島に移住し、そこから親交が深まりました。 

小平氏:私が理事を勤めているNPOで池田に講演をしてもらう機会があり、話すうちに意気投合したのです。当時はコロナ禍で、地域のNPO活動が活発だったので、自然と交流の機会が増えていました。 

池田氏:私の前任者である当時の総務部長が退社したタイミングで、直球で「うちに来ない?」という誘いを受けました。正月明けにFacebookのメッセンジャーで突然メッセージをもらい、驚きつつも、とても嬉しかった記憶があります。たまたま私も次のキャリアを考えていた時期だったのと、彼の人柄やKOBIRA社の可能性に惹かれ、入社を決めました。 

——池田様にとってKOBIRAは、これまでのキャリアで所属していた組織とはカルチャーが違ったのではないかと思います。そんなKOBIRAに入社した決め手は何だったのでしょうか。 

池田氏:私はこれまでベンチャーの経営コンサルティング企業やスタートアップで働いた経験がありましたが、一度歴史のある「どっしりした会社」を経験してみたいという気持ちがずっとありました。元々ライフプランニングの仕事をしていたこともあり、企業や個人の「積み重ねられた物語」に興味があったんですよね。 

その中で、小平からスカウトを受け、純粋に『面白そうだな』と感じました。歴史ある企業かつ、課題が山積している地方エリアだからこその新しい経営モデルを模索し、変わった仕掛けをたくさん行おうとしている点。それらが私の好奇心をそそりました。
また、せっかく鹿児島に移住してきたのだから、この地域で面白い経営に携わってみたいということ、さらに自分がテーマにしてきた人・組織に関して取り組んでいけること——これらが入社を決めた背景です。 

小平氏:前編でお話した内容ですが、ちょうどそのタイミングで組織が限界を迎えていました。コロナ禍で直接のコミュニケーションができなくなり、それまでの「飲み会で解決する」というような文化の課題が顕在化し始めていたのです。池田の持つ人や組織に関わるスキルと経験が、まさに必要だと感じました。 

変革に必要な「右腕」の存在 

——前編で、取り組み前の課題感と具体的な取り組み内容について伺いましたが、お二人の「一枚岩感」が凄まじいと感じました。どのように役割を分担されているのでしょうか。 

小平氏:変革の初年度は、経営課題の大半が組織の問題だったので、特に分担という形をとっていませんでした。その後、色々な取り組みが功を奏して組織課題が一段落すると、事業面における新しい展開も考えなければならなくなり、現在は自然と役割分担しています。私が事業寄り、池田が組織寄りという形で、お互いの強みを生かしています。 

池田氏組織を社長ひとりだけで変えていくのは、相当大変だと思います。どれだけ熱量高く推進していても、現場に一律に響くわけではありませんし、時間もかかります。その状態が続くと、社長は孤独になり、「もういいか」と諦めてしまいたくなることもあるでしょう。そこで、同じ目線、同じスピードで考え、壁打ちできるパートナーの存在が必要だと思います。 

また、変革を進めるときは、「力と愛の動的平衡(どちらか一方に偏るのではなく、真ん中に静止するのでもなく、行ったり来たりしながら全体としてバランスしている状態)」という考え方が重要と考えています。力によって変えるだけだと人はついてこない。かといって、寄り添う愛だけでも過去に引きずられてしまって変えられない。私たちの役割分担としても、特に初期は小平が力で意思決定し、私はそこをフォローする意味で関係性(愛)にフォーカスするといった形でした。ある意味で前衛・後衛の役割分担とも言えるかもしれないですが、その後も分担を時々によって変えながら担っています。そういう意味でも、二人三脚で組織変革を進めるメリットがあると思います。 

あとは、二人がいいのか三人がいいのか、それぞれどういうスキルセットを持ち、どういうパワーバランスが適切なのかなどは、組織によって違うでしょう。 

まずは3割をターゲットにし、成果を波及させる 

——本格的に組織変革の取り組みを始めた2022年、1年で50以上のアクションを実行されたと伺いました。これだけの変革を一気に行うとなると、現場の反発も生まれそうです。 

小平氏:そうですね。中には「組織に対してお金をかける」ことに対する理解が希薄なメンバーもいました。人材が溢れる中で採用できていた時代の人だと、その感覚が違うのはある意味当たり前です。例えば、トラックを購入するのに300万かかるのは普通だけど、組織に30万投資するのは理解できない——そういった感覚の違いです。 

ただ、みんな思うことはあったと思いますが、Beforeが悪かったので、「何とかしようと頑張っているんだな」「前よりは良い」と感じてくれていたと思います(笑)。 

また、先代までのトップダウン文化が強かったため、そこで育ってきた社員には「社長がやると言ったら一旦やってみよう」という気風があったことも機能したかもしれません。 

——これだけ一気に変革を進められたのは、100名弱という組織規模も関係しているのではないかと考えました。例えば池田さんが大企業の人事トップだった場合、どのように組織変革を進めていくのか興味があります。 

池田氏:おっしゃる通り、私たちの規模——100人規模の組織であれば、ある程度のスピードで会社全体を一気に変えることが有効です。変化のペースを緩めると、どうしてもホメオスタシス(恒常性)が働いてしまい、変革の勢いが弱まってしまうのです。一定割合のメンバーが変化に適応するまでは踏ん張りどころですが、その「臨界点」を超えれば、自然とメンバー同士の相互作用で変化が広がっていきます。 

一方で、大企業においては、会社全体を一気に変えるのは現実的ではないので、部分的なアプローチが必要だと思います
「組織の3割が変わると自然と全体が変わり始める」という理論はよく聞きますよね。もし私が10部門ある大企業の人事トップだとしたら、そのうち2~3部門に集中してまず変革を進めます。そして、その中の3割が変わるまで徹底的にコミットします。
全体を一気に相手にするのは無理です。まずは一部をターゲットにしてそこに集中する。その結果が他にも波及していく、という流れが現実的だと思います。
変化に適応しやすい若手を集めた新しいカンパニーや部門を作って、そこで作った成功事例を他に展開していくというアプローチも有効かもしれません。 

また、現場でのトラブル処理にリソースを割くのも必要ですが、上手くいっている部門やプロジェクトにもリソースを注ぐことが重要です。トラブルの火消しばかりに集中してしまうと、成功しているメンバーやプロジェクトが「見てもらえていない」と感じてしまい、せっかくの勢いが弱ってしまう可能性もあります。成功している部分にもスポットライトを当てて伸ばしつつ、事例として全社に展開することが必要です。 

——取り組みの実行後、当初の組織課題は解決に向かいましたか。 

池田氏:そもそも、組織変革は単一の課題・打ち手・結果がある、というような単線的な取り組みではありません。それゆえ、シンプルに語りづらいところではあります。 

ただ、前編でもお話した通りですが、採用ができるようになったことは分かりやすい変化です。ローカルな老舗企業でありながら、2年で19人採用できたというのは、大きな成果だと思います。
特にエンジニア不足が長年課題で、何年かけても一人もとれない時期が長かったのですが、本格的に組織づくりに注力してからは、部長レベルの方を一人、メンバーレベルの方を2人採用できました。 

 

——そういった優秀なエンジニア、スタートアップ人材を採用できていると伺っていますが、どういうところに惹かれて入社されるのでしょうか。 

池田氏:大きく2パターンあります。 

1つ目は、元々鹿児島出身でUターンを考えているが、地域に面白い企業がなかなかないな……と感じている方が、KOBIRAのことを「歴史がありつつ新しい経営スタイルを模索している面白い企業」と感じて来ていただけるパターン。鹿児島企業の中で、相対的に採用における競争優位性を確立できている、ということだと考えています。 

2つ目は、「仕事に給料だけではなく意義を求める」という若手世代に刺さっているパターン。弊社はNoteやYoutubeでも、MVVやカルチャーについてたくさん発信しているので、そこに共感してくれる方は多いです。人事の世界で、MVVは「空中戦」と揶揄されることもあったりしますが、抽象的な言葉を作るだけではなく、本社移転を始めとして具体的で分かりやすいアクションに移せていることもKOBIRAの強みだと認識しています。 

特に、MVVに共感して入社してくれた方は大きく活躍してくれていて、良い人材が採れていることも見えてきていますね。 

——サーベイなどの定量的な変化はありましたか。 

小平氏:組織サーベイの数値には、明確に変化がありました。元々偏差値40くらいの数値だったのですが、全社的には少しずつ上がり続けています。部署単位では、特に悪かった部署が劇的に改善された、ということも多々ありました。 

池田氏:特に「社内の風通し」「部署を超えたコミュニケーション」などの項目は、大きく改善しました。Uniposのエピソードなどを見ていても「ずっと健全なコミュニケーションの中で仕事をしたかったけれど、色々な事情でそれができていないもどかしさがあったんだろうな」と感じますね。 

 

——最後に、組織づくりやマネジメントにおいて、どのようなことを大切にしながら進められているのかお聞かせください。 

小平氏:私が大切にしていることは、「スピード」と「トライアンドエラー」です。利害調整し始めると時間がかかるので、とにかく即断即決で決めていかないといけない。ある程度は「よく分からないけど社長が決めていた」くらいでいいのかな、と思っています。 

その判断の軸になっているのがMVVで、MVVを軸に高速な意思決定ができています。だから、MVV策定→組織改革→事業改革という順番で取り組めたことは、とても良かったと感じていますね。 

池田氏:組織を動かす上で私が大切にしている考えは、「組織はすぐには変わらない」という前提です。今この瞬間のニーズに応えることももちろん大切にしなければいけませんが、そこだけを見ていると、中長期的な組織の変化は生み出せません。特に100年後を見据えたミッションを掲げるKOBIRAでもありますし、「中長期的な目線で考え続ける」という視点は常に大事にしています。 

また、どんなに美しい事業戦略を描いていても、実行する組織が動かなければ意味がありません。「企業文化や組織に投資し続ける会社であること」は、経営において変わらず大切にしていきたいポリシーですね。 

※記載されている情報はインタビュー当時のものです。

この連載の記事一覧

UNITE powered by Uniposをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む