覆面対談|本音で語る「伝わる職場」のつくり方

Uniposが実施した「ねぎらい」に関する調査では、多くの管理職がその必要性を感じながらも、実践には難しさを抱えていることが分かりました。では、ねぎらいが自然に交わされる組織は、どのようにつくられていくのでしょうか。
今回は、所属や肩書にとらわれず管理職としての本音やリアルな経験を語っていただくため、「覆面対談」を実施。人や組織と向き合ってきたお二人に、これまでの失敗や試行錯誤を振り返りながら、ねぎらいが根づく組織に必要な考え方や、現場で実践してきた取り組みについて赤裸々に語っていただきました。

Profile

Aさん

メーカーで長年、製造現場の管理職や組織運営に携わる。異なる企業文化が交わる合弁会社でのマネジメントを経験し、多様な価値観を持つメンバーと向き合ってきた。

Bさん

老舗メーカー取締役。組織改革や企業文化の醸成を推進。DXや社内コミュニケーション施策を通じて、風通しのよい組織づくりに取り組んでいる。

挨拶や雑談、何気ないコミュニケーションからねぎらいは生まれる

—Uniposの「ねぎらい」に関する調査結果をご覧になって、どのように感じましたか。

Bさん:
「ねぎらいたいと思ったけれど、できなかった」という人が約4割いることに驚きました。
ねぎらいたい気持ちはあっても、「伝え方を間違えたらどうしよう」と考えてしまうのかもしれませんね。例えば「頑張ったね」と言ったときに、「今までは頑張っていなかったと思っていたんですか」と受け取られる可能性もあります。
そこまで考えずに伝えてもいいと思うのですが、言葉をどう受け取られるかが気になって、言えなくなることもあるんでしょうね。

Aさん:
私はそもそも「ねぎらいたいと思っている人が4割もいるんだ」と感じました。私たち世代は、「仕事はやって当たり前」という感覚がありました。
仕事なんだから報告するのも、周囲に気を配るのも当然で、それに対してわざわざ言葉をかけるという感覚があまりなかったと思います。その意識の変化を考えると、「相手をねぎらいたい」と思っている人がこれだけいることは良い傾向ですよね。
気持ちがあるわけですから、あとは行動に移すきっかけが必要なのではないでしょうか。

—特に30代では、ねぎらうことへの迷いも見られました。

Aさん:
30代は初めて管理職になる人も出てくる年代ですよね。同僚より先に管理職になったり、自分より年上の部下を持ったりすることもあります。こうした状況になると、「自分がこの人に『頑張ったね』と言っていいのだろうか」「何様だと思われないだろうか」と迷うこともあると思います。

Bさん:
ねぎらいの言葉だけを切り取って考えると難しくなりますよね。
「頑張ったね」と言えばいいという話ではなく、その前提に相手へのリスペクトや信頼関係があるかどうかが大きいと思います。
普段から関わりがあり、その人のことを見ている人から言われる「お疲れさま」と、ほとんど話したことのない人から突然言われる「お疲れさま」では、同じ言葉でも受け取り方が違います。

Aさん:
ねぎらいを自然に生むためには、まず挨拶が必要だと思います。
普段まったく挨拶もしない職場で、突然「ねぎらいましょう」と言われても難しい。「おはようございます」と挨拶をする。「今日どう?」と尋ねる。そしてちょっとした仕事の話をする。その延長線上に、「昨日は大変だったね」「頑張ったね」という言葉が生まれてきます。

以前、ある現場で上司に「おはようございます」と挨拶したのに、上司がパソコンを見たまま返事をしなかった、という話がありました。こうしたコミュニケーションの一つひとつが職場の雰囲気を形づくります。
反対に、目を見て挨拶を返したり「昨日どうだった?」と声をかけたりすれば、そこから会話が始まります。私は特に職場の「雰囲気」を大切にしていましたし、雰囲気が軽くなれば挨拶もしやすく相談もしやすくなる。
そうした雰囲気の延長線上に、ねぎらいも生まれてくると思っています。

Bさん:
弊社でも挨拶や返事はすごく大切にしています。「行ってまいります」「ただいま帰りました」といった言葉も含め、元気な挨拶と明るい返事を基本にしていて、新入社員にも、まずはそこをしっかりやろうと伝えています。会社にいくつかのルールをまとめたクレドカードがあり、その中には、人を認めることや、相手の話をしっかり聞くことなども入っています。ねぎらうことは、いきなり大げさに褒めるということではなく、目の前の人の話を聞くことや、笑顔で反応することもその一部だと思います。

—デジタル化によって、コミュニケーションのあり方も変わりましたか。

Bさん:
昔は私自身、社宅に住んでいましたし、仕事が終われば飲みに行き、休日も一緒に過ごしていました。今振り返ると、コミュニケーションだらけだったんです。毎日顔を合わせるので、「今日は少し元気がないな」「何かあったのかな」という変化にも気づきやすかった。もちろん、昔の働き方に戻せばいいということではありません。チャットツールは便利ですし、弊社は「Unipos」を導入してのピアボーナスを送り合うことで、感謝を伝え合う文化もより広がりました。そういう意味で「冷たいデジタル」ではなく、「あったかいデジタル」になってきたと感じています。

一方で、便利さや効率を求めるほど、人と接する機会が少なくなる面もあります。そこで弊社では、運動会を復活させたり、人が自然に話せる場所をつくったりしています。
また、朝はすぐに仕事を始めるのではなく、「まず雑談しよう」と話しています。 朝9時に来たら、10時くらいまではパソコンを開かずに雑談をする。 一見すると仕事とは関係ないようですが、その中で昨日の出来事やUniposの投稿、仕事の相談なども自然と話題になります。雑談から仕事の話へつながることで、お互いの状況を知る機会にもなっています。

Aさん:
出社しても全員が一日中パソコンを見ていたら、「何のために来たんだろう」と感じてしまいます。大事なのは、「コミュニケーションを取りましょう」と言った本人が、まず行動することだと思います。上司が朝来ても挨拶をせず、「自分は忙しいから」雑談に参加しない。それでは、職場の雰囲気は変わりません。上に立つ人が自分から挨拶をして、声をかける。
その姿を周囲が見れば「こうしていいんだ」と思えるようになります。言葉で求めるだけではなく、まず行動で示すことが必要なんだと思います。

価値観の押し付けや伝言ゲーム、これまでの失敗が教えてくれたこと

—ねぎらわれていないことを理由に、転職を考えたことがある人も約4割いました。

Aさん:
私自身も心当たりがあります。初めて部下を持った頃は、ずいぶん苦労しました。報告は部下からするものだと決めつけていましたし、自分の価値観を押し付けてしまっていたのだと思います。その結果、複数の部下が離れていきました。あの時のことは今でも忘れられません。
だからこそ、「もっと声を掛けていれば」「もっと相手を理解しようとしていれば」と今でも思います。今、当時の自分に何か言えるなら、「もっと周りをよく見なさい」と喝を入れたい気持ちです。

Bさん:
以前の上司には、「俺の背中を見ろ」というタイプの人が多かったですよね。私自身も、言葉でねぎらわれた記憶はほとんどありません。ただ、人は「ちゃんと見てもらいたい」のだと思います。「あいつはよくやっている」と言うだけでは、何を見てそう思ったのか分かりません。
何を頑張ったのか、どんな苦労があったのか。そこまで見て言葉をかけるから、相手にも届くのではないでしょうか。

Aさん:
上司が仕事をきちんと見ていることは、周囲にも伝わりますよね。「あの人は、自分たちの仕事をちゃんと見てくれているんだ」と感じられると、そこに安心感が生まれます。
ねぎらいの言葉そのものだけではなく、「自分の仕事を見てもらえている」という感覚が大事なんだと思います。ただ「頑張ったね」と言えばいい、という話ではない。
私が現場へ伺うときも、事前にUniposの投稿を見て、「この人はどんなことをやったんだろう」と現場も確認してから行くようにしています。そこで「現場を見たけどこれはどうやったの?」と聞くと、本人が自然に話してくれます。
周囲から「あの人はこんなこともやったんですよ」と教えてくれることもあります。やはり相手を知ることで、初めてかけられる言葉が出てくると思いますね。

—管理職がコミュニケーションを続ける上で、意識していることはありますか。

Bさん:
私自身も昔よく失敗していたのですが、社長から言われたことを、そのまま「これをやって」と部下へ伝えてしまっていたんです。すると、「それって社長の伝言ゲームですよね」と言われたことがありました。
振り返ると、「何のためにやるのか」という一番大切な部分を飛ばしてしまっていたんですね。それでは、言われたことをこなすだけになってしまい、自分事にはなりませんよね。
だから今は、まず「何をやっているの?」「それは何のため?」「どうやるの?」「いつまでにやるの?」「次は何をやるの?」と聞くようにしています。
目的や考えを共有してからコミュニケーションを取ることを意識しています。

Aさん:
その話にすごく共感します。「社長が言っていたからやろう」ではなく、「私はこう思うからやろう」と、自分の言葉で伝えることが大事なんです。一度、自分の中で咀嚼してから伝える。
その違いはすごく大きいです。上司が自分の価値観だけを押し付けるのではなく、相手と一緒に考える姿勢を見せることが大切だと思いますね。
その積み重ねが、やっぱり職場の空気をつくっていくんだと感じます 。

耕し続けないと企業の文化は根づかない

—クレドカードやイベントの復活、雑談のルールなど多くの取り組みがありますが、Aさんの会社では現在の文化をどれくらいの時間をかけてつくってきたのでしょうか。

Bさん:
7年ぐらいかかってますよ。以前はかなりトップダウンの傾向が強い会社でした。そこからチャットツールやUniposなどを取り入れながら、下からも意見が言える会社に変えてきました。今では、新入社員から私に対しても普通に意見が出ます。今日の取材も、1年目の社員から「Aさん、今日その服装で取材に出るんですか?」と言われましたからね(笑)。
また、新入社員から「自由な会社っぽく言っているけれど、全然自由ではないですよね」と言われることもあります。会社にまだ染まっていない人の目線は大事です。
ただし、何でも好き勝手に言えばいいわけでもないので「言ったことには責任を持とう」と伝えています。不満があるなら、その裏側には「本当はこうしたい」という考えがあるはず。
そこまで含めて話してほしいと思っていますね。

—7年間、どのようなことを続けてきたのでしょうか。

Bさん:
とにかく地道にやり続けること。組織文化は、一度研修をしたり、制度を導入したりしたら完成するものではありません。耕し続けるしかないと思っています。クレドカードについても、管理職に抜き打ちで書いてもらうことがあります。私自身も書くのですが、忘れている項目があったりします。
でも、忘れている項目は、そのときの自分ができていないことだったりするんですよね。例えば「素直に謝る」が出てこなければ、「最近、素直に謝れていないのかな」と振り返る。職場のルールは、自分たちの状態を見るためのバロメーターにもなっています。

Aさん:
文化は続けないと元に戻ってしまいます。私はいくつかの職場に出向してきたのですが、最初は挨拶してもなかなか反応してもらえないところもあります。それでも何度も足を運び、挨拶をして、現場を見て、頑張った人に「ありがとう」と伝えていると、少しずつ向こうから話してくれるようになりました。続けることが一番大事だし、一番大変です。止めれば文化は止まってしまう。だからこそ、上にいる人が率先してコミュニケーションを続けることが本当に大切だと思います。

それから、言葉の使い方も大切ですね。何かがうまくいっていないときに、「何やってるんだ」と言うのか、「どうやったらできると思う?」と聞くのか。受け取られ方がまったく違う。本人もできなくて悩んでいるところで「何やってるんだ」と言われれば、どうしても縮こまってしまいます。
それよりも、「どうやったらできそう?」「一緒に考える?」「アイデアを聞かせて」と聞かれると自然にコミュニケーションが生まれていきます。

—最後に、経営者や人事、管理職の皆さんへ、日々のコミュニケーションを見直すためのヒントをお願いします。

Bさん:
ねぎらいは、一言を伝えることではなく、日頃の関わりの積み重ねだと思っています。 普段から相手を見て、話を聞いているからこそ、「お疲れさま」の一言にも重みが生まれるのではないでしょうか。

Aさん:
挨拶やお礼など、まずは目の前の小さなことを丁寧にやってみることが大事だと思います。最初から大きな仕組みをつくるのは大変だし、その必要はないと思います。ね。
朝、相手の目を見て「おはよう」と伝える。誰かがしてくれたことに気づいたら、「ありがとう」と伝える。Uniposで何か前向きな行動を見つけたら、実際に会ったときにも「見たよ」と声をかける。最初は恥ずかしいことかもしれません。
でも、やってみなければ何も変わりません。うまくいかなければ、やり方を変えて、また試せばいいんです。先ずは自分から一歩踏み出して行動することが大事だと思います。
その繰り返しが、自然なコミュニケーションを育てていくのではないでしょうか。

 

※記載されている情報はインタビュー当時のものです。

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