なぜ、GMOアドパートナーズは「最高益」と「離職率低減」を両立できたのか?

劇的に変わりゆく国内ビジネス環境のなかで、組織変革・風土変革の岐路に立たされている企業は多いようだ。しかし変革の端緒を社内のどこに求めるべきか、頭を悩ますことも多いと聞く。GMOインターネットグループで広告メディアセグメントの中核を担うGMOアドパートナーズ株式会社は、2015年の事業再編後、経営戦略・事業戦略・人事戦略による「三位一体経営」の推進を断行した。同年に同社代表取締役 社長執行役(GMOインターネットグループ グループ常務執行役員・CBO)に着任し、同社の組織変革・風土変革を牽引してきた橋口誠氏が、これまでの変革の経緯を解説した。

Profile

橋口 誠氏

GMOアドパートナーズ株式会社 代表取締役社長
GMOインターネットグループ株式会社 グループ常務執行役員

2000年に広告代理事業を行う株式会社日広に入社し、一貫して広告分野における職責を歴任。2015年にはGMOアドパートナーズ株式会社の代表取締役に就任、2022年にはGMOインターネット株式会社(現GMOインターネットグループ株式会社)のグループ常務執行役員・CBO (Chief Branding Officer)に就任し、グループ広告部門統括およびグループブランド・広報・ファシリティを担当する。

4つの特徴を有するGMOインターネットグループ

10の上場企業・108のグループ会社から成るGMOインターネットグループ。近年はインターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、そして暗号資産(仮想通貨)事業の4セグメントで事業展開している。同グループでは従業員を「パートナー」と呼称するが、同グループパートナー数は7,361名。世界20カ国に事業展開し、海外拠点数は56拠点にも及ぶ。

GMOインターネットグループは「人的資本の活性化」の旗印のもと、主に以下4つの取り組みを強化している。

まずは、インターネット事業を開始した1995年から行動指針を体系化・共有する「①GMOイズム」だ。
当初は2ページサイズほどのコンパクトさだったが、「最低でも年に1〜2回開かれる」という改訂委員会で常にアップデートされたことで現在は約20ページのボリュームにまで及んでいるようだ。

2つ目の取り組みが、年に一度の「②GMOアワード」。直近1年間で最も活躍したパートナーが表彰されるアワード型のイベントで、団体・個人・中途・新人などの部門ごとに表彰される。パートナーのモチベーションの向上にもつながっているだろう。

3つ目の取り組みが、3カ月に一度実施している「③GMOパートナー・カンファレンス」。こちらも1995年から続ける取り組みで、グループ横断型の全体ミーティングとして海外にも同時通訳で配信される。グループ総代表・熊谷正寿氏からの世界のパートナーに向けトップメッセージが伝えられることもある、とても貴重な機会になっているようだ。

そして最後の取り組みが、「④国内各拠点の定期イベント」によるコミュニケーション活性化。毎月、コミュニケーションスペースを活用したグループ横断イベントが企画され、業務とは全くかけ離れたイベントでパートナー同士が親睦を深めている。

パートナー(=従業員)の満足度・盛り上がりがないと、お客様に提供するサービス・商品の満足度が上がっていかない——。それがGMOインターネットグループの、人財戦略の考え方だ。事実その方針により、同グループは「14期連続」の増収増益を達成している。

大幅再編で浮き彫りとなったGMOアドパートナーズの課題

そんなGMOインターネットグループにおいて「広告メディアセグメントの中核」を担っているのが、1999年設立のGMOアドパートナーズ株式会社。連結693名のパートナーが在籍し、東京・渋谷の本社事務所の他に、大阪・宮崎・沖縄・ベトナムにもオフィスを構えている。GMOアドパートナーズは現在、主要連結会社4社・グループ連携会社2社で構成するホールディングスカンパニーとして活動するが、現在の体制になるまでには紆余曲折があった。

同社代表取締役 社長執行役員(GMOインターネットグループ グループ常務執行役員・CBO)の橋口誠氏は2015年に3代目の同社代表取締役に着任して以来、ほぼ毎年のように組織変革・風土変革の具体的取り組みを実行してきた。時系列にまとめると、主には以下の順に進められている。

「我々のグループは仲間づくり(M&A)も含めて毎年数社ずつを迎え入れ、徐々にグループとして大きくなってきていた企業体です。広告メディアセグメントを中心とした事業再編のタイミングで私は代表取締役に着任。当時GMOアドパートナーズは7つの連結子会社を傘下に置くホールディンスクカンパニーでしたが、GMOグループの“選択と集中”をしようという方針のもと、事業会社を再編しています」(橋口氏)

事業再編後に橋口氏がまず取りかかったのが、主要連結子会社4社それぞれに独立し存在していた人事制度の統合だった。橋口氏は「時間をかけながら丁寧に新たな人事制度を決めていった」と振り返る。また人事制度統合の翌年には新たにCI(コーポレート・アイデンティティ)「ともにつくろう」を策定し、4社に共通する行動様式を定めた。

「同時に、事業再編によって拡大する組織・縮小する組織が出てきたので、会社から指示される人事異動だけではなく、自らの手挙げで連結横断異動を認めるFA制度を開設。現在は年2回『あそこに行きたい』『こんなことをしたい』といった思いを端緒とした自発的異動により、組織の活性化を図っています」(橋口氏)

2018年までの取り組みにより「ある程度のルールと仕組みが整った」と橋口氏。しかし変革の成果が会社・組織内に浸透しているかどうかはそれだけではわからない。そこで同社は変革の状態を可視化する取り組みを翌19年から実行。代表的取り組みが「Unipos」と「サーベイシステム」の導入だった。

「我々の社内では『Unipos』とは呼んでおらず、アドパートナーズのポイントということで『ADPo(アドポ)』という言い方をしています。ピアボーナス(社員同氏が称賛や感謝を伝え合うために給与以外の報酬=インセンティブを送り合う仕組み)を導入したことで、ピアボーナスがたくさん動いているところは活性化されている・逆にピアボーナスが行き交っていないところはあまり活性化がうまくいっていない——そうした見方ができるようになりました。同時にサーベイシステムで毎月のパートナー満足度調査が指標化し、実際に組織活性化につながっているかを調査しています」(橋口氏)

これらの取り組みを経て同社は2020年1月、再開発の進む渋谷の新オフィスに拡大移転している。

経営戦略・事業戦略・人事戦略による三位一体経営の推進を

2020年1月より、気持ちも新たに新オフィスを稼働させたが、その後まもなくコロナ禍に見舞われた。それによって起きたのは、多くの企業と同様、コミュニケーションの断絶だった。当時の報道でも知られた通りGMOインターネットグループは他の国内企業に先駆け、2020年1月26日より在宅勤務体制へと移行。さらにその後も独自基準「パンデミック時における対策発令・対応レベル」を設け、出社体制の変更を行っている。

「新オフィスの稼働に合わせて準備していたことがたくさんありましたが、それらすべてがフイになりました。しかしコロナはその当時から言われていたように2年でも3年でも続いていくとわかっていた。ならばその状況がこれからしばらく続いていくことを前提にしながら、コロナが明けるのを待つのではなく、今どういったことをしたらいいのか考えよう——そう思い、オンラインでのコミュニケーション活性化を積極的に進め、パートナーの皆さんからもさまざまなアイデアを集め実行しました」(橋口氏)

具体的な施策として橋口氏が挙げるのは、まずは全パートナーが集う会議や全幹部が集う会議のオンライン化。会議ではコロナ禍における全体方針や業績進捗の状況がほぼ毎月配信された。また新たなメディアとしてデジタル社内報「ともつく」を刊行。ここでは週2本ほどの頻度で記事がアップされている。さらに「ともつく放送室」は月に1回、お昼の時間に放送される社内放送局で、橋口氏も積極的に出演する。「あまり仕事にリンクしていなくて構いません。頑張っているメンバー、あとは新しく立ち上がったチームのメンバーらを毎回生放送のスタジオに呼び、社内向けにお話してもらっています」(橋口氏)。

オンラインで「社内のパートナーの存在を知る」機会が増えたことは、組織活性につながった。すなわち生放送や先述したアワードはグループ内で有意義な活動をしているパートナーを知る機会。2019年導入のADPoでは生放送・アワードに露出したパートナーに向け、たくさんのピアボーナスが送られる。そうした変化をきっかけに同社ではUnipos導入翌年「ADPo大賞」を開設。社員投票形式でメンバーを表彰する仕組みも設けられたことで「確実にさらなる組織活性化が起きている」と橋口氏は話した。

このほかにも同社が2015年以降に取り組んだ組織・人財の活性化策は枚挙に暇が無い。特にユニバーサルワークプロジェクトなど組織・人財活性化に紐付くプロジェクトは「立候補制」でメンバーを募って立ち上げている。それらの甲斐もあってさまざまな成果が生まれ、例えばADPo(Unipos)内で送信されている感謝の数は平均1人あたり34.6件(月間)。これは同社と同規模企業平均値の1.8倍の数値だ。またサーベイシステムで測定したエンゲージメントも、平均以上の数字をたたき出した。離職率も下がり、コロナ下でも最高益を出すことができたという。

橋口氏は2015年から現在まで連綿と続く組織変革・風土変革を振り返り、最後にこう語った。

「当初からロードマップがきちんと決まっていたわけではありません。しかしUniposなどで変革の状態が可視化できたことで、常に『ここが足りなくなるはず』『今ここを活性化していかないといけない』と予測を立てられた。それが2015年以降に行った組織変革・風土変革の原動力になったと思います。

中長期の経営戦略を立てるとき、経営者は事業戦略だけを注視してしまいがちですが、それだけではままなりません。一緒に考えるべきは『人事戦略』です。すなわち、ある実績・目標を目指すのであれば、事業展開としての拡張の余力・人財の底上げをやはり同時に検討していかないと実現が難しい。中期の経営戦略・経営計画をかけると同時に、ある程度の人事施策というのもイメージしながら、事業の戦略を立てていく、それが我々の足元の歩みだったというふうに思っております」(橋口氏)

※記載されている情報はインタビュー当時のものです。

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