従業員主体で実現するカルチャー変革の極意

人事施策を実行しても従業員に使われない、または形骸化してしまう――そして結局組織が変わらないというお悩みを持つ人事・経営者は多いのではないだろうか。それは、組織の基盤となる現場の風土(カルチャー)が変わっておらず、空中戦になっているからである。

今回は、全従業員を巻き込む施策を浸透させ、組織風土改革を実現するためのチップスについて、全社参加型カルチャープラットフォーム「Unipos」の導入・浸透支援を行うUnipos社カスタマーサクセスに話を聞いた。

地銀のカルチャー変革はどう実現したのか

実際に支援した企業の中で、最も印象的な組織風土改革を実施している企業の一つが株式会社静岡銀行だという。

昨今、地方銀行に対するニーズの急激な変化に対応して、大胆なビジネスモデル変革が求められている。一方で、そうした変化に柔軟に対応するためには、同時に自律的かつ果敢にチャレンジできる組織風土の醸成が必要である。
株式会社静岡銀行では、上記のような背景から「全部変え」を謳う抜本的な人事制度改定を取り組んでいる。
2019年頃から開始したこの取り組みだが、マイキャリアデザイン制度(※グループ内での異動やグループ外への副業等が可能な公募制度)の申込者数が約1.5倍へ増加するなど、大きな成果につながりつつある。

設立80年、従業員数約3,000名という大所帯な企業で、このような体質転換を進めるうえでのヒントはどのようなものだったのか。

 

―――Unipos導入を含む大きな組織変革の中で、当時Uniposのカスタマーサクセスとして、静岡銀行の社内の様子はどのように見えていましたか?

静岡銀行様では、当時事業的な背景に加えて、採用応募者の減少・自己都合による退職が増加したことなどから、「組織風土改革に取り組まざるを得ない」状況でした。その中で、「褒める・認め合う文化風土」醸成や新たに策定したValue浸透のための施策として、2021年からUniposを採用いただきました。

担当者の藤島様(当時の役職は経営管理部・理事部長)は、組織変革にあたって「制度だけを変えても意味がないからこそ、風土から全部変える。これまでやり方に囚われない挑戦をする」と仰っており、その言葉から相当な覚悟と意思を持って風土改革を起こそうとされていることを感じました。カスタマーサクセスとして「必ず成功させなければ」と感じた瞬間でした。

ネガティブ層に目を向けすぎず、中間層をポジティブ層へ引き込む

―――その中で、Uniposの導入に対しては、経営や現場からのどのような反応がありましたか?

行員の皆さん全員がポジティブな反応ではなく、積極的でない方も一定数いらっしゃいました。
一方で、静岡銀行様に限らず、2:6:2の法則の通り、始めからポジティブ層が多いことは稀有です。どうしてもネガティブ層の意見が大きく聞こえがちですが、施策実行のポイントは、中間層の6割をいかに早くポジティブ層にひき込むか、ということです。

―――では、2:6:2の法則でいうと、どの割合になることを目標に置けばいいのでしょうか?

企業様によって出発時点での組織状態が違うため、他社や平均と比べるのではなく、あくまでも出発点との比較をするのがいいと考えています。
これまで大手企業様を20社以上担当してきた私個人の感覚だと、ポジティブ層が3割になると、社内の雰囲気が変わったように感じられることが多いです。
※編集注:実際に、マイノリティグループの割合が35%となったときに、マイノリティグループが連帯を組み、組織文化に変化をもたらす」という定説が存在する。(参考文献:Kanter, R. M. (1977) Men and Women of the Corporation. Basic Books: New York.)

 

―――2021年の導入当初、3,000名規模の全社一括の導入事例は弊社としてもなかったため、サポートは容易ではなかったと思います。特に苦労されたのはどんなことでしたか?

お客様のご意向で「強制感を出しすぎずに実行する」という意識が強かったことは、Uniposのような参加の自由度が高い施策を浸透させる上では難しいポイントでした。
この意向の背景として、当時の静岡銀行様の行員さんは「真面目でルールに従って行動する」という特性が強く、それ自体は良いことなのですが、経営としてはより「自分で考え決断して動く」力を伸ばしたいと考えられていたことがあります。

トップダウンだけではなくボトムアップで盛り上げる

―――その課題に対して、どんなプロジェクトマネジメントをされましたか?

前提として、Uniposに限らず人事施策とは使われることに意味があるのではなく、使われたことで効果が発揮され、施策目的が達成することに意味があると捉えています。

その上で、ポイントは大きく2つあります。

1つ目は「トップダウンだけではなくボトムアップで施策を盛り上げること」です。
静岡銀行様に限らず、特に大企業だとこういった施策はトップダウンでやる、という企業様が多いです。ただ、Uniposは従業員が主体で使うプロダクトですし、従業員の主体性を引き出したいという目的もありました。そこで、ボトムアップでの盛り上げをいかに作るかを意識しています。

例えば、Unipos導入の際は必ず「アンバサダー」という現場の旗振り役チームを組成いただくようにお願いしています。主な役割としては、積極的な利用や他メンバーへのポジティブな声かけ、現場からの生の声を吸い上げて事務局に共有してもらうことです。

静岡銀行様では、アンバサダーに従業員向け説明会の内容を事前に共有し、盛り上げていただきつつ、支店ごとに説明会を実行していただきました。「人事から降りてきた施策ではなく自分たちが主体で使う、自分たちのための施策と、自分ごと化してもらうきっかけになったと思います。
実際、私がお手伝いした企業さんの中でも、アンバサダーが企画に入り、施策を回して下さるなど積極的に活動される会社は、上手くいく感覚が強いです。

現場に影響力のあるキーマンを巻き込む

ポイントの2つ目は「現場に影響力のあるキーマンを協力者にすること」です。
施策を実際に利用するのは現場の従業員ですが、その現場に一番影響力のあるのは管理職の方々です。

具体的には、導入の際に管理職向けの説明会を実施しました。そこで「部下に承認を伝えやすくなる」「部下の利用状況からリアルな組織コンディションを把握できる」などのマネジメント向けの利用メリットと活用方法をお伝えしました。

また、導入してからしばらく経った後、活用している支店長に話を聞き、他の管理職に好事例を展開するということもしました。
これを使うことで自分にメリットがあるというのが具体的に分かると、当たり前ですが、利用の動機づけになります。

従業員がメインで使う施策やツールの浸透においては、このように現場に近く、施策の目的を理解し共感/協力して下さるキーマンを事前に巻き込んでおくことが重要だと考えています。

―――Uniposは「全従業員を巻き込む」「参加の自由度が高い」という意味で、浸透ハードルが高い施策の一つだと考えています。Uniposの浸透に成功パターンはあるのでしょうか?それとも成功要因は個別化するのでしょうか?

Uniposの浸透という意味では、ある程度の成功パターンは見えています。
ですが、それはUniposという組織風土改革の一歩目としての施策浸透に過ぎないので、お客様の組織を変えるという目線に立つと、個別化が必要です。それを考えるのが、私たちのカスタマーサクセスの仕事だと考えています
また、どうしても従業員数が多い大企業だと、短期で組織風土を大きく変えることは困難です。だからこそお客様と対話する上で大事にしているのは、出発点と比較して「前進している」「前よりよくなっている」という変化をどれだけ見つけられるか。これは、他社の組織風土改革も見ているUnipos社のカスタマーサクセスだからこそ分かる(比較できる)部分でもあります。

組織を変えたいと思っている人の味方であり続けたい

―――個人として、お客様の組織風土改革に伴走する際に意識しているスタンスはありますか?

私自身も以前大企業の一員として働いていたこともあり、大企業で組織変革を進めるのは、非常に大変で難しいことだと理解しています。また、人事の皆さまをはじめとして社内に働きかける側は、「社内で味方がいない」「孤独だ」と感じられていることも多いです。
私は、そんな中でも組織を変えたいと強く思っている人事や施策の事務局の皆さんは本当に尊い存在と思っています。だからこそ、私をはじめUniposのカスタマーサクセスは「背中を押す」「鼓舞する」「(お客様が考えている)大切なことを伝え続ける」というコミュニケーションを大事にしています。

また、サクセスの上では、お客様と同じ視点で物事を見ているとダメだと考えています。お客様が仰っていることを100%信じるのではなく、会話しながら本質を探ることを意識しています。
2歩3歩先に私たちカスタマーサクセスがいて、お客様が目指す理想へ導く・正しい方向へ引き戻す。そんな関係性でいたいと思っています。

静岡銀行様では、前述の通りマイキャリアデザイン制度(※グループ内での異動やグループ外への副業等が可能な公募制度)の申込者数が約1.5倍へ増加する変化もありました。こうした「挑戦してみてもいいかも、と思える」「挑戦した人が可視化されて組織全体で称賛される」風土づくりに寄与できたのではないかと思います。

個人的に、マイキャリアデザイン制度に応募された若手行員さんが「出る杭は打たれると思われていたが、前に出ても良いんだと思えるようになった」とコメントされていたのを知ったときは、組織風土が変わられたのを実感しました。

 

―――9月から、しずおかフィナンシャルグループ約8社へ利用拡充しました。会社を越えてグループ全体でのフルフラットコミュニケーションという理想像を掲げられる中で、次のステップに向けての想いを聞かせてください。

やはり、各グループの人事担当の方との連携がポイントになると思うので、ご担当者様への事前の説明やヒアリングを進めています。また、各グループの代表や人事責任者の方々から期待コメントを頂けるよう、施策に対して前向きな空気感をつくることに努めています。
もはや私がグループ全体を見る人事くらいの意気込みで、しずおかフィナンシャルグループ全体での成功へ伴走していきます。

 

―――最後の質問です。Unipos社でのお仕事を通して何を達成したいですか?

私が担当している大企業は、これまで日本の成長を支えてこられた企業様ばかりです。そういった企業様に尊敬の念を抱きながらも、カルチャーを変えたいと思われている皆さまの大きなチャレンジに伴走するため何がお手伝いできるか、日々必死に考え動いています
また、私自身もマネジメントする役割を担っているので、「心理的安全性の高いチームを作るには」「一人一人の個の力を最大化させるためには」という大きい問いに対して考えていますし、管理職の皆さまのお悩みもよく理解できます。
組織風土を変えることは本当に難しく時間がかかるものですが、組織風土改革のプロとしてより多くの企業様の後押しができればと思っています。

【静岡銀行様よりコメント】

1.グループ会社利用拡充の背景
これまで全役職員の柔軟な働き方の実現に向け、「ワークスタイル・イノベーション」を立ち上げ段階的にあらゆる取組みを実施してきました。2023年度からは更にこの取組みを発展させ、「カルチャー&ウェルビーイングイノベーション」と称し、役職員一人ひとりのエンゲージメントとウェルビーイングの向上につながる施策を展開しています。2022年10月に持ち株会社体制へ移行し、しずおかフィナンシャルグループ全体で、①互いを尊重し感謝し合う文化を醸成、②組織横断的なフルフラットの実現に向けて施策を検討する中で、グループ各社への拡充に至りました。

2.コストをかけてでも取り組むと考えた理由
既にCheer*Chatを利用していた静岡銀行の行員から、普段業務で関わりのあるグループ会社の社員にも「感謝の思いを伝えたい」という要望を何度も受けておりました。
2年前から銀行単体で行っていた認め合う文化風土の醸成が、徐々に広がりつつあることを実感するとともに、グループ各社もCheer*Chatの導入にポジティブな反応が多かったです。当グループにおける文化風土の変革が最重要課題であることから、コストをかけてでも取り組もうと考えました。

3.担当カスタマーサクセスへの印象
従来から非常に手厚くフォローしてもらっていますが、特に、今回のグループ展開におけるフォローは非常に丁寧に実施してもらっています。まず、各社の人事担当者に向けた説明会を数回、導入後の利用説明会も、管理職向け、一般社員向けに資料を分けて作成していただき、内容も他社で実施した説明会のノウハウを生かし作成していただきました。また、当日の説明会は「非常にわかりやすかった」と好評で、説明会後の各社サインアップ率についてもすぐに共有いただきました。今回のグループ会社への拡充をきっかけに、今後、更なる利用推進を一緒に楽しく検討していけることが非常に楽しみです。

▼静岡銀行社の風土改革についての記事はこちら

※記載されている情報はインタビュー当時のものです。

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