日本発で世界を変える、Sansanから学ぶミッションドリブン経営とは

Sansan株式会社は、「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに、働き方を変えるDXサービスの企画・開発・販売を主に行っている。代表的なサービス「Sansan」は、 100万件以上の企業情報があらかじめ搭載され、名刺やメールといった接点の情報を集約して、あらゆる顧客情報の営業活用を実現する営業DXサービスだ。名刺管理サービス市場での国内シェアは約82%、 10年連続国内シェアナンバー1を誇る。近年では2020年にインボイス管理サービス「Bill one」、2022年には契約DXサービス「Contract One」をリリース。マルチプロダクトへ移行し急成長を遂げている。

今回は取締役/CHROの大間祐太氏に、事業・組織ともに拡大する中での組織づくりについて伺った。

創業期から変わらない「世界を目指す」というチャレンジ精神

「創業期から変わらず『このプロダクトで世界の出会いを変える』という意思を持って事業を展開してきました。」
国内にとどまらず、世界を目指すというスタンスは、過去に代表の寺田氏が働いていた環境の影響も大きいという。

「寺田は創業前、三井物産で働いていました。シリコンバレーに赴き、有望なITベンチャーを見つけて日本での展開を考えるという仕事をしていました。シリコンバレーで生まれたベンチャーは、数人で始めたような小さな会社だったりしますが、まっすぐな目で世界を変えるんだと挑戦し続けている。寺田が肌で感じてきたそのような志は、今のSansanにも通じるものがあると思います。

2020年から続いたコロナ禍でも、グローバル展開の停止は考えていなかったという。日本から世界を目指す企業として、後に続く企業が増えるようにという想いもあってのことだ。
「国内でどんな立場でありたいかというと、国内の市場にこだわらず、日本のBtoBをはじめとしたIT企業にとってロールモデルとなれるような先駆者でありたいという想いを常に持っています。 世界のビジネスシーンにおいて、本当に出会うべき人たちが、出会うべき人たちと出会える。そんなプロダクトを作れたとしたら世の中のビジネスは圧倒的に加速すると思いますし、それがSansanが果たすべき役割だと思っています。」

ミッションドリブン経営✖️物語を作ることで経営指針をより強固に

※出典:Sansan株式会社統合報告書2022

「Sansanは創業当時から、何のためにやるのか言語化してから事業戦略を描いていた会社で、それは今も変わっていません。全てのことはミッションの実現のためにあります。経営陣は勿論、マネージャー陣もそう考えていますし、社員にもその意識が浸透するようなコミュニケーションを日々意識しています。」
ミッションドリブン経営を全力で実行した結果が、2020年からの業績の伸びに顕著に表れている。Bill Oneは今や主力サービスのSansanと肩を並べ、会社を牽引する大黒柱になりつつある。マルチプロダクトを成功させるSansanの強さの土台には、物語を描く力があると語る。

「弊社は物語、つまりストーリーを描く力がとても強い会社だと捉えています。例えば、請求書を扱うBill Oneの場合、一見すると『出会いからイノベーションを生み出す』というミッションは紐付きにくい。しかし、Sansan名刺管理はビジネスの入口、Bill oneは出口としての請求書。つまりSansanは『ビジネスのプロセス全てにおけるインフラになる』のだ、というストーリーのもと、マルチプロダクト展開が始まった2020年に『ビジネスインフラになる』というビジョンを掲げました。言語化したことにより社員も腹落ちした状態で向き合えていると思います。今後も事業を加速していく上で、このビジョンが求心力になると考えています。」

※出典:Sansan株式会社統合報告書2022

「プロダクトとミッション・ビジョン・バリューズがどう紐づいているのかを、我々は物語化していく。それをいかに社員に手触り感のあるものとして理解・納得してもらうか。それに向き合うことには重要な価値があると考えています。」

人数増加に伴い、経営理念への理解を深める取り組みに再注力

順調な中にも、課題はある。2020年から急激に事業拡大をしたSansanは、人員増加に伴って「経営理念の社内浸透」が徐々に薄れてしまうのではないかという懸念があったという。課題を感じた人事部は過去の施策も含めて、今一度社内へミッションやビジョン、バリューズの浸透を強化する取り組みを実施した。

「Sansanでは、ミッション・ビジョン・バリューズ、そして事業を行う上での前提であるプレミスを含めた理念を『Sansanのカタチ』と呼んでいます。従業員600名超えたあたりから、カタチの浸透の強化に改めて取り組みました。中途で入社した社員は、「SCOP(Sansan Culture Onbording Program)」という研修を受けてもらっています。丸5日間、人事預かりでSansanのカタチをはじめ、会社やプロダクトの歴史、カルチャーなどについての理解を深めるための研修をしてもらう取り組みです。
もちろん中途社員だけでなく、一度退職して再入社した場合も実施しています。なぜミッションが『出会いからイノベーションを生み出す』なのか、なぜビジョンが『ビジネスインフラになる』なのか、歴史や経緯を含め説明して、8つあるバリューズについてはなぜこの価値観を大事にしなければならないか説明をしています。そして、実際にそのバリューズに当てはまる体験があったかなど、掘り下げて共有・言語化していきます。」

創業からおよそ2年おきのペースで取り組んできた「全社カタチ議論」という施策がある。その名の通り全社員が参加して、「Sansanのカタチ」が今のフェーズにふさわしいものなのか、見直すべきことはないかなどを、その時の組織における課題によってテーマを決め議論するというものだ。

「2020年のコロナ禍ではフルリモート勤務を余儀なくされたため、社員同士のコミュニケーションが激減しました。このタイミングで、カタチ議論を実施しました。テーマは『バリューズのアップデート』です。社員同士のコミュニケーション活性という目的は勿論ですが、バリューズを自分ごと化して考えてもらうという目的もありました。そこで、『現在のバリューズの中には存在せず、だが暗黙的にSansanの強みになっているバリューズというものがあれば、それを言語化して追加せよ』というミッションを与え、全社員に考えてもらいました。」

次々とサービスをローンチしていく中で、根本にある理念は創業当時と変わらないというSansan。提供するサービスの違いはあれど、「Sansanらしさ」を大事にしているということが窺える。しかし、「Sansanのカタチ」はありつつ、部署単位では個別最適化したカタチをメンバーで考えて設定しているケースもあるという。

「『Sansan人事本部のカタチ』も独自に設けました。OKRに似ているのですが、こういうミッション、バリューズを掲げている会社にある人事組織は何を大事にすべきなのかを議論し、我々は何を成し得る組織なのかを言語化しています。

エンゲージメント向上を重視したユニークな人事施策

Sansanのユニークな人事施策についても伺った。施策設計の意図や気を付けているポイントはどのようなものなのだろうか。

「人事施策は既得権益にならないよう気をつけています。Sansanの人事施策に『福利厚生』という概念は存在せず、事業成長及び生産性向上に貢献するものしか取り入れていません。例えば、『Know Me』は飲み会補助ですが、普段コミュニケーションを取りづらい社員同士がつながることでシナジーを生み、生産性を向上させることを目的としているので、部門を跨いだ飲み会限定にしています。部門を跨いだコミュニケーションを活性化することで、エンゲージメントや他部署との交流につながり事業成長に寄与するという考えです。」

子育て世代への施策も特徴的だが、その背景には女性特有のキャリアの築き方への課題を見据えて対策しているという。
「お子さんのいるご家庭への支援として『OYACO』という施策を実施しています。子育て世代の社員が増えてきた中、復職までのリードタイムの短縮や、復職後の育児・家事の時間負担減などが課題でした。仮にそれらの問題により優秀な社員が復帰せず離職してしまった場合は、会社として大きな打撃です。新しい方を採用する場合、時間もコストもかかります。それならば既存社員に投資した方が安価かつ生産性は絶対高い。こう語るとドライに感じますが、課題に応じて施策を実行しているというところが根本にあると思います。」

※出典:Sansan株式会社統合報告書2022

満3歳までの認可外保育園料の差額補助や、幼稚園保育園をコンシェルジュが探してガイドするという取り組みも実施している。
これらの制度が、優秀な社員の離職防止、早期復帰につながっている。
2022年に公開された統合報告書では、女性の管理職比率が16.5%とかなり高い数字を維持しており、プライム市場上場企業の中でも高い数値となっている。

※出典:Sansan株式会社統合報告書2022

女性役員がいないプライム市場上場企業数
(参考:2022年7月の時点で、プライム市場に上場している企業のうち約2割が女性の管理職がいない状態)

人事施策の他にも、会社として「神山まるごと高専」を支援するなど、教育にも取り組んでいる。同校は、日本が起業家輩出国になるためのフレームを作るという目的で設立された。

「日本では起業が当たり前でないから起業家が増えない。そうした観念を変える教育環境に対して挑戦したいですし、学生が成長した時に、Sansanに入社したり、起業して一緒にビジネスができるような循環も生み出せられればと思っています。」

人事施策の費用対効果をどう測るか

人事施策の策定において、気になるのは投資効果の部分だ。施策に対してどのように目標を立てて振り返りをしているのか、語っていただいた。

「ROIを測れるものについては振り返っていて、HRデータ、エンゲージメントデータ、評価データ、勤怠データも含め、休職率や退職率などを見ています。そのほかにも、人事施策の利用率や、新しい人事施策を出した際の利用率とエンゲージメントの相関も見ています。
定量的な観測でいえば、例えば弊社ではUniposを導入していますが、投稿率などはマテリアリティにおける目標にも掲げています。1年分の契約更新がおよそ800万円強ですが、年収800万円の人材1人が組織にもたらす効果と、Uniposに投資する費用対効果で比較した場合、圧倒的にUniposの方が費用対効果が高いと思っています。 社内で送り合っているUniposの約70%に、バリューズのハッシュタグがついており、バリューズに紐づいたお互いの良い行動を見て、賞賛や拍手をする。それがエンゲージメントやバリューズへの理解度を上げる。こういった効果への寄与が高いと思っているので、投資を続けています。」

Sansanが施策の定量観測も大事にしている背景としては、バリューズの中で「感謝と感激を大切にする」という項目があるからだという。投稿という見える形で共有することを大切にしており、各部署の相互理解や積極的コミュニケーションの促進の結果としても受け止めている。
「実体験ですと、Sansanは現在採用にアクセルを踏んでおり、単月で営業30名採用という目標があります。裏には猛烈に動いてくれるリクルーターがいて、達成の際には握手をして喜び合いました。彼は寡黙なので一言「今後も頑張ります」との返事でしたが、その後Uniposで『普段、あまりこういうことを言わないのですが、握手すごく嬉しかったです。今後も絶対やりましょう!』と投稿をもらいました。
この嬉しい気持ちが、社員間で1ヶ月で数100件あれば、組織として絶対に良い影響を生んでいる確信をしています。

今後もSansanは世界中の出会いのあり方そのものを変えることを目指し、「出会いからイノベーションを生み出す」を掲げミッションドリブン経営を展開していく。
「人と組織の可能性を広げ、事業成長を加速させる」をステートメントとして掲げるSansanの人事本部。事業と社員の成長を重ね、物心両面で豊かになれる組織を目指しながら、その時々の課題に合わせて柔軟に、かつ計画的に施策を実行する人事本部のあり方は、同じようにグローバルスタンダードを目指す企業のロールモデルとなりうるのではないだろうか。

※記載されている情報はインタビュー当時のものです。

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