GMOアドパートナーズが目指す組織像 最優先は「人」と、人を育む「組織文化」

GMOインターネットグループの一翼を担うGMOアドパートナーズは、主要4社の事業会社と、特例子会社1社から構成されるホールディングスカンパニーだ。企業規模も雰囲気も異なる6社を束ね、グループとしての一体感をつくるために、同社が大事にしているのは「人」と「組織文化」だという。

同社はなぜ組織文化を重視するのか。組織文化醸成のためにどのような取り組みを行っているのか。GMOアドパートナーズ社長・橋口誠氏に、組織文化に対する考えを聞いた。

Profile

橋口 誠

GMOアドパートナーズ株式会社代表取締役社長執行役員

2000年に広告代理事業を行う株式会社日広に入社し、一貫して広告分野における職責を歴任。 2009年には株式会社NIKKO(現GMO NIKKO株式会社)の代表取締役、2015年にはGMOアドパートナーズ株式会社の代表取締役に就任し、グループ内におけるネット広告・メディア事業を統括。

グループ再編時、もっとも大事にしたのは組織に所属する「人」

GMOインターネットグループの広告領域を担う総合ネット広告・メディア企業、GMOアドパートナーズ。同社はGMO NIKKO、GMOインサイト、GMOアドマーケティング、GMOソリューションパートナーの主要4社と、特例子会社1社から構成されるホールディングスカンパニーである。これら6社は同じグループ企業ではあるものの、出自や企業規模、担う領域は大きく異なっている。そのため、グループ再編の際は、各社の組織風土や組織文化の違いからくる戸惑いが社内に漂っていたという。この点を問題視したのが、2015年に同社の社長に就任した橋口氏だった。

「会社を連結グループ化する際、会計システムや人事評価制度、就業規則を整えるなど、やるべきことは多数あります。ですが、もっとも優先して大事にしなければならないのは組織に所属する“人”に関することだと私は考えています」

ここでいう「人が大事」とは、単にパートナー(※)の数が多ければいいという意味ではない。むしろ、「人数がそろっているというだけでは不十分」と橋口氏は指摘する。

※GMOグループでは従業員をパートナーと呼ぶ

「組織の基本は“人”です。会社というのは、単なる箱に過ぎません。その箱を動かすのは人です。人と人がコミュニケーションをとり、刺激し合うことで組織が活性化し、シナジーが生まれて事業が拡大するのだと思います。箱とルールを用意して、さあどうぞ働いてくださいというだけでは会社は前に進みません。人の想いやマインドが同じ方向を向いてこそ、みんなで動き出せるのだと私は考えています」

組織風土づくりは長期的な事業成長につながる

では、どうすれば従業員が結束し、事業を前進させられるのか。特にGMOアドパートナーズ連結は、連結子会社化した後も各社は独立性を保ってビジネスを行っており、その上でグループとしての連帯感をつくるという難しい舵取りが求められた。ここでポイントになったのが、組織文化を構築し、組織風土をより良くすることだった。

2018年、橋口氏はグループ各社の社長と共に、GMOアドパートナーズグループとしての共通CI(コーポレートアイデンティティ)として「ともにつくろう」を策定。各社の社長が自らパートナーに向けてCIに込めた意義を発信し、グループとしての組織風土の土台づくりに注力していった。

このような組織風土の構築については、一般的な企業では優先度が下げられがちだ。それは、組織風土をつくることが、売上や利益といった目に見える成果にどうつながるのか見えにくいからだ。しかし、橋口氏は「組織風土が培う人の結束こそが、事業を成長させる原動力」だと断言する。

「もちろん、売上や利益は大事ですし定量的な目標も持っています。ですが、組織としての連帯があるかどうかで、その目標をどれだけ早く達成できるか、あるいは越えられるかは違ってきます。グループ連帯の効果は常に後からついてくるものなのです」

橋口氏はさらに、GMOアドパートナーズ連結グループの構造をマンションに例えて説明する。

「せっかく同じマンションに住んでいるのに、それぞれが部屋に閉じこもっていては何も変わりません。共同で使えるリビングルームや食堂など、皆が集まって交流できるような仕掛けを用意することで、人と人との間に刺激が起こり、新しい挑戦や良い取り組みが生まれるのです」

GMOインターネットグループに根付く、組織文化を重視するカルチャー

これほどまでに橋口氏が「人」や「組織文化や風土」を重視する背景には、GMOアドパートナーズの母体であるGMOインターネットグループ全体の方針がある。

「人を大事にする考えは、そもそもGMOインターネットグループ全体に創業当時から根付いているカルチャーなんです」

橋口氏は2000年に現GMO NIKKOの前身となる株式会社日広に入社。同社が2008年にGMOインターネットグループ傘下となって以来、現在に至るまでグループ各社で役員を歴任してきた。その意味で、GMOのカルチャーをもっとも体現してきた人物といっても過言ではないのだ。

「新しい取り組みを始める際は、いかにそれを“文化”として社内に広めていくかを自然と考えるようになっています。私もGMO歴が長いですから(笑)」

GMOインターネットグループがいかに組織風土/文化を大事にしているかよくわかるのが、グループのパートナー全員に配布されているという「GMOイズム」の存在だ。

GMOイズムとは、GMOインターネットグループに所属する全パートナーが大事にすべき価値観や判断基準、行動指針などがまとめられた冊子である。GMOイズムには、たとえばグループとしてのビジョンやフィロソフィーが明文化された「スピリットベンチャー宣言」や、目標達成に取り組む姿勢が示された「目標達成10ヶ条」、幹部層の行動指針となる「幹部10ヶ条」など、GMOインターネットグループ全体のカルチャーを形作る様々な規範が示されている。同グループに所属するパートナーは、定期的にこのGMOイズムを唱和することで、常に仲間たちと同じ価値観を共有できる。だからこそ、「GMOではビジョン研修やマインド研修をぜんぜんやっていないし、やる必要もない」(橋口氏)のだ。

信頼関係はポジティブなコミュニケーションから生まれる

もっとも、GMOイズムさえあれば何もしなくてもグループが1つにまとまるというわけではない。根本的なイズムは共有していても、仕事の進め方などはやはり各社それぞれに異なるからだ。そのずれが、ともすれば軋轢となりグループとしての一体感を失わせるのではないかと橋口氏は懸念した。

では、どうすればそうしたずれを防げるのか。会社ごとのプロセスの違いは、どうしても生まれるものだ。大事なのは、そうしたプロセスの違いを個性としてお互いに尊重することであり、そのために必要なのが「信頼」なのだと橋口氏は言う。

「スピード重視でビジネスを進めるチームもあれば、スピードよりもじっくり考えながら慎重に進めるタイプのチームもあります。それは、どちらがいいというものではなく個性なんです。信頼関係があれば、お互いの個性を認め合いながら共に進めるはずです」

そうした信頼関係をつくるのに重要なのが、日頃からのコミュニケーション、それもポジティブなコミュニケーションを口に出して表現することだと橋口氏は強調する。

「普段からコミュニケーションをとっていない相手と信頼関係は生まれにくいし、信頼関係のない相手に何かを頼むこともやりにくいですよね。だからといって、外からコミュニケーションを取りなさいと指示するのもおかしい。必要なのは、当人同士によるポジティブなコミュニケーションが自然と生まれるような仕掛けなんです」

「感謝」が根付いた組織風土をつくる

そこで2018年末、コミュニケーションの活性化と前述したCIの浸透を目的に同社が導入したのが、称賛と感謝のメッセージをパートナー同士送り合うことでポジティブな組織風土を構築するサービスUniposだった。

導入に際して橋口氏がこだわったのは、6社合計で700名以上にもなるパートナー全体に一括導入することだったという。通常、サービスの導入は各社ごとに行われるというから、Uniposの一括導入はまさに異例ともいえる取り組みだった。この点について、橋口氏は「一括導入でなければ意味がないと考えた」と振り返る。

「組織規模が大きければ大きいほど、感謝は届きにくく、コミュニケーションは取りにくくなりがちなんです。たとえば、当社も全国に拠点を持っていますが、物理的に離れているとなかなか感謝する機会も持てませんよね。普段、感謝が届きにくいところにまでしっかり届けるためにUniposを導入するわけですから、スモールスタートでは意味がなく、全体で一斉に導入すべきだと思ったのです」

橋口氏の考えは見事に当たった。普段は交流が薄いパートナー間でも積極的にUniposがやりとりされるようになり、目指していたポジティブなコミュニケーションの連鎖が起きた。「Uniposを導入して悪いことは一切ない」と橋口氏は笑う。

「Uniposによって気軽に感謝し合える機会がとても増えています。別の会社で普段は関わらない人に対してもUniposが送られていたり、拍手機能で気軽にリアクションしたりと、新しい形のコミュニケーションが生まれていると感じます。組織間の壁も低くなってきた実感があります」

橋口氏自身は6社を束ねる社長という立場もあり、自身がUniposを送ることについてはその影響力を考慮して慎重だ。だが、逆にパートナーからUniposが送られたときには、思わぬ効果を実感しているという。

「700名以上のパートナーがいても、私と日頃から直接やりとりする人は一握りです。それ以外のパートナーにとっては、社長なんてよくわからない存在なんです。そんななかで私にUniposが送られると、その内容がパートナーの目にも触れ、社長ってこんな人なんだ、こんなことをしているんだと、人となりを理解してもらえる効果があると感じています」

人的資本情報開示への対応にも期待

さらに、Uniposの活用シーンとして、今後予定されている人的資本の情報開示にも対応できる可能性を橋口氏は語る。

人的資本とは、人材を「資本」として捉える考え方のことだ。2023年以降、上場企業を中心にこの人的資本の情報開示が義務化されることをきっかけに、人材の価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」が注目されている。人的資本の情報開示において、離職率や女性管理職比率といった数字で出しやすい項目はさておき、“人がどれだけ生き生きと働いているか”といった企業の状態を定量的に数値化するのは難しい。Uniposに対して橋口氏が期待しているのはこの点だ。

「Uniposの利用率や送られているメッセージなどのデータが、通常は定量化しにくい組織の状態や組織風土/文化を可視化してくれる可能性を感じています」

Uniposの導入によりグループ各社の連帯感を強化し、着実にコミュニケーション活性化を進めているGMOアドパートナーズ。橋口氏は、同社の未来像をどう描いているのか。この点について問うと、「実現したいのは、常に“感謝し合えている状態”にある組織」と回答が返ってきた。

「感謝されて嫌な気持ちになる人はいませんからね。感謝することが根付いている組織こそが理想連結グループ会社全体を俯瞰して見る立場として、そう思います」

一人ひとりが自己成長できる組織を目指して

橋口氏が“感謝が根付いた組織”の先に見据えるのは、パートナー同士が信頼感で結ばれた心理的安全性の高い組織だ。そうした組織では、パートナーも失敗を恐れることなく挑戦でき、その挑戦を通して自己成長できる。

この「自己成長できる組織風土」こそが、橋口氏が目指す組織の姿である。

「戦略をどれだけ立てても、それを実行できる優秀な人材がいなければ企業としての成長はありません。そして、優秀な人材は、自己成長できる組織にこそ集まってくるものです。つまり、感謝によって築かれた良い組織風土は、最終的に企業の競争力を高めることにつながるのです

インターネット黎明期から広告業界の変遷を見てきた橋口氏は、テレビや雑誌といったマス広告がインターネット広告に追いつかれ、追い越される場面を直に体験してきた。今後、インターネット広告の影響力はさらに大きくなり、かつてのテレビCMのような存在として定着していくだろう。

「テレビCMを見て小学生が真似をしたり、大人になってこのテレビCM懐かしいねなんて言ったりするのと同じように、インターネット広告も時代の中心を担い、時代を作っていくでしょう。GMOはそうしたムーブメントの起点でありたいと考えています」

「人」と「組織文化」を大切にする同社の成長戦略は、まさに“今”という時代を象徴するものといえそうだ。

※記載されている情報はインタビュー当時のものです。

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