「雰囲気の良い職場」から生まれる組織文化こそが業績を向上させる
2023.06.23
目次
総合リース会社・三井住友ファイナンス&リース。
2023年3月期には過去最高益を達成するなど、着実な成長を続けている同社は、組織再編や統合により社内に多様なカルチャーが存在していることが特徴の一つと言える。そうした組織を一つにまとめるために重要視しているのが、「組織文化」の醸成だ。
一方で課題となっていたのが、組織文化の土台ともいえる「雰囲気の良い職場」づくり。同社はいかにして職場の雰囲気を改善し、組織文化構築に取り組んでいったのか。
常務執行役員 人事部長(※)の岡元徹氏に話を聞いた。
※肩書は取材当時(2023年3月)
外資系企業との統合で、組織文化の構築が急務に

三井住友ファイナンス&リース(SMFL)はリース、割賦、ファイナンス、レンタル、デジタルなどの多様なソリューションを提供する大手総合リース会社だ。2007年に三井住友フィナンシャルグループの三井住友銀リースと住友商事グループの住商リースが合併して誕生し、事業再編や企業買収などを経て事業領域を拡大させてきた。現在、従業員は全世界に3,719人、うち国内だけで2,800人に上り、全国に多数の拠点を構えて事業を展開している。
同社の特徴ともいえるのが、異なる企業文化を背景に持つ人材の多様性だ。特に近年、同社の企業文化に大きなインパクトを与えたのが、GEの日本におけるリース事業部門との統合である。日本風の企業文化と外資系の企業文化の融合が起こった。
「外資系企業との統合は、組織に大きな刺激をもたらした」と岡元氏は言う。
「たとえば、コミュニケーションのとり方です。外資系企業は日本企業に比べてより頻繁にフィードバックを行っており、上司と部下のコミュニケーションも密接です。そうした文化の違いもあり、『もっと従業員と経営層との距離を縮めてほしい』といった声もあがりました」
そういった従業員の声に対し、同社は柔軟に対応を進めていった。たとえば、タウンホールミーティングやラウンドテーブルといった制度の新設だ。前者はオンラインも活用して経営層と多数の従業員がインタラクティブに交流する場であり、後者は役員と従業員が少人数形式で対話する座談会である。


さらに、SMFLは2020年4月、これまでの経営理念や経営方針を再定義した「SMFL Way」を発表した。SMFL Wayは「ミッション(使命)」「ビジョン(目指す姿)」「バリュー(価値)」「プリンシパル(基本姿勢)」の4レイヤーから成り、三井住友ファイナンス&リースという企業と、そこに所属する従業員のあるべき姿を明確に示している。
「多様な企業文化や風土を融合し、組織としての一体感を醸成するには、新しいビジョンやバリューが必要でした。SMFL Wayは、従業員が何か迷いを抱えたときに立ち返る基本姿勢です。異なるバックグラウンドやカルチャーを持つ従業員が一つになるために、SMFL Wayはとても大事な役割を果たしてくれました」
ともすれば、文化の違いから軋轢が生じる恐れもある大企業同士の統合。しかし、SMFLは、多様性を尊重する方針や制度の新設、そしてSMFL Wayの制定により組織文化の改革を進め、従業員を一つにまとめあげていった。
「雰囲気の良い職場」をつくることは業績向上につながる

一方で、SMFLは新たな課題に直面した。誰も予期していなかったコロナ禍である。テレワークが中心となり、雑談などのコミュニケーションが失われた。オフィスで顔を合わせていれば自然と見えてくる人間関係や、誰がどんな仕事をしているのかといった情報も捉えにくくなった。そのため、管理職からはマネジメントに悩む声が多くあがるようになったという。
そうしたコミュニケーションに対する課題を改善するために、まず上司・部下の対話を増やす機会として1on1ミーティング実施を促進。人事部から各部に積極的に呼びかけた。
また、人事部のメンバーが参加した社内勉強会で話題にあがったのは、従業員同士が感謝を伝えるとともに報酬を送り合う「ピアボーナス」の仕組みだった。
「この仕組みを導入すれば、テレワークでもコミュニケーションが活性化するのでは」と考えた人事部メンバーは、岡元氏にピアボーナスサービスのUnipos導入を提案。岡元氏は「やってみよう」とすぐに検討をすすめた。
岡元氏が感謝・称賛の仕組みの導入に前向きだったのは、「雰囲気の良い職場が大事」という経営哲学を持っていたからだ。
「以前、とある大企業の経営者が『雰囲気の良い会社は業績が上がる』ということを言っていたんです。それを聞いたときはピンとこなかったのですが、実際にその経営者は低迷していた会社をV字回復させました。たしかに考えてみれば、メンバーが上司の顔色を伺いながら仕事をする会社と、雰囲気が良くてメンバーがどんどん挑戦できる会社なら、後者の方が絶対に成長するはずです」
では、どうすれば「職場の雰囲気」が良くなるのか。その鍵を握ったのが、ピアボーナスサービスによる感謝と称賛だ。感謝や称賛を送り合うことで、当人同士の関係性が良くなるのはもちろん、それを見ている周囲のメンバーにもポジティブな感情が伝わり、さらなる感謝・称賛の連鎖が生まれるからだ。
それまでのSMFL社内に、感謝や称賛がなかったわけではない。しかし、意識的にできていたかというと、そうではなかったと岡元氏は言う。たとえば、オフィスでたまたま会ったときにお礼を言うことはあっても、お礼を言うためだけにわざわざ呼び出したり、メールを送ったりはなかなかできない。感謝や称賛は、あくまでも日常的なコミュニケーションにとどまっており、何かのついでに行われる程度だった。
だが、コロナ禍により、そうした日常のコミュニケーションは失われてしまった。オンライン会議やビジネスチャットで行われるのは、あくまでも業務上のやりとりだ。感謝や称賛を送りたい気持ちはあっても、そのためだけに業務ツールを使用するのは憚られることもある。遠慮なく感謝や称賛を伝えるには、専用の「場」が必要であり、それをUniposが担ってくれた。
新たなつながりが生まれ、コミュニケーションが活性化

岡元氏の号令のもと、同社はまず人事部にUniposをトライアルで導入。高い利用率を維持し、メンバーにも好評だったことから、グループ会社を含む国内の全従業員約2,800名に一斉導入した。
導入から約半年たった今でも利用率は上々で、管理職からはポジティブな声が届いているという。
「感謝・称賛を送り合う仕組みができてからメンバーが生き生きしているという声をよく耳にします。また、そもそもそういった専用のサービスを導入した会社の姿勢自体を評価する意見も多く見られます。感想は総じて前向きで、ネガティブな話は聞きません」
まさに岡元氏が目指していた「雰囲気の良い職場」が実現されたわけだが、効果はそれだけに留まらないという。
「バックオフィスのように、黙々と仕事をする部署の成果は、これまで全社に伝わりにくいものでした。感謝・称賛を伝える専用の場をつくったことで、そうしたバックオフィスの貢献が誰にでも見えるようになったのです」
また、経営陣からも「なかなか見えづらい現場の動き・雰囲気が、メッセージを通じて見える」と好評だ。しかも、誰かに強制されるわけではなく、現場の一人一人が自発的に投稿するメッセージであるため、「脚色なし」の生の情報が得られることも大きなポイントだ。
「Uniposがなければ、現場の情報を得る機会が少なくなり、今ではないと不安になるほどだ。」と岡元氏は語る。
さらに、これまでになかった新たなつながりも生まれているという。
「たとえば、入社3年目くらいの若手メンバーがいるのですが、私は彼とは部署も違うし、普段は会うこともほとんどありません。そんな彼とたまたま業務で少しかかわることがあり、彼が私に対して感謝のメッセージを送ってくれたんです。これは、Uniposがなければ生まれなかった交流だと思います。ふつう、25歳の若手が人事部長に『ありがとう』と言うのはハードルが高いですからね」
組織文化変革のポイントは、社内のつながりと意識の共有

直属の上司部下であれば、1on1などでコミュニケーションを取る機会もあるが、部署を超えたやりとりとなると簡単ではない。Uniposは、そうした関係性の隙間を埋める役割も果たしている。今後は培われた関係性を生かし、部署を超えた勉強会などの開催も構想しているという。
約2,800名という大規模な組織で変革を、現在進行形で進めているSMFL。これだけの規模の組織において、文化風土を変えていくのは並大抵のことではないと思われるが、岡元氏は「大企業であっても組織文化を変革することは可能」と断言する。

「重要なのは縦横斜めのつながりをつくり、全員が組織文化の変革に対する意識を共有すること。簡単ではないし時間もかかりますが、Uniposのような仕組みを導入することで、組織文化は着実に醸成されていくでしょう」
感謝や称賛が飛び交うことで「雰囲気の良い職場」が生まれ、社員が失敗を恐れず挑戦しやすい組織文化が培われる。そして、社員の挑戦が積み重なることで、いずれは会社の業績にも大きな影響を与えると岡元氏は考えている。
多様性に満ちた組織を1つにまとめ、さらなる成長に導くために、組織文化は重要な役割を果たしているのだ。
※記載されている情報はインタビュー当時のものです。
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