長崎のモノづくり企業が挑む、「現場が主役」の組織風土改革

長崎県諫早市に拠点を構えるメルコアドバンストデバイス株式会社は、三菱電機グループの一員として、半導体製造の最前線を走り続けています。生産開始から40周年を迎え、常に社会の先端技術を牽引してきた歴史と経験を持つ同社は、近年、「働きやすさ」のさらなる高みを目指し、「働きがい」の創出、そして社内外との連携強化を核とした組織風土改革を推進しています。 

今回は、代表取締役社長である長谷川和義氏に、その背景と具体的な取り組み、そして未来への展望についてお話を伺いました。

Profile

長谷川 和義 氏

メルコアドバンストデバイス株式会社 代表取締役社長

1986年三菱電機株式会社に入社。半導体デバイス事業部門でエンジニアとして光デバイス、高周波デバイスの開発/生産技術、国内工場及び海外サブコンの製造ライン構築等に携わった後、当該半導体デバイスの品質保証部門、営業/マーケティング部門でグローバルな業務に従事。高周波光デバイス製作所の工場営業、製造管理部門を経て、2020年4月より現職。

 盤石な「働きやすさ」から「働きがい」の追求へ 

メルコアドバンストデバイス株式会社は、かねてより従業員の「働きやすさ」を重視し、その基盤を築いてきました。 

長谷川氏:「弊社では、かねてより『働きやすさ』の確保に力を入れており、この点はすでに高いレベルで実現できていると自負しています。例えば、『プラチナくるみん』の認定や、年次有給休暇取得率95%という高水準を達成し、男性の育児休業取得率も7年連続で100%を維持しています」 

こうした取り組みの結果、同社は長崎県内において「いい会社」として認知されつつあると言います。 

しかし、同社が目指すのは、単なる「働きやすい」会社に留まりません。長谷川氏は、「最終的には、従業員一人ひとりが『この会社で働いていて本当に良かった』と心から感じ、さらには『他の人にもぜひ勧めたい』と思えるような、従業員エンゲージメントが高く働きがいのある会社を目指したい」と語ります。 

 その背景には、地域での採用競争の激化といった現実的な課題も存在します。だからこそ、会社のプレゼンスを高め、持続的に成長し続ける企業として、社会から信頼され、従業員とその家族から頼りにされる存在となることを目標としているのです。

「現場力向上」を核とした組織風土改革 

モノづくりを基盤とする製造業において、「『現場力』の向上は企業の根幹を支える最も重要な要素である」と長谷川氏は強調します。 

長谷川氏:「現場が元気よく、やりがいを持って仕事に取り組める環境と風土が、何よりも大切だと考えています。『現場のことは現場の人間が一番よく知っている』という考えに基づき、現場からの提案や要望を可能な限り実現するための施策を推進してきました。 

まず、従業員の意見を吸い上げる仕組み自体を見直しました。 

以前は『労使懇談会』という名称でしたが、これを『職場懇談会』へと変更しました。この名前の変更一つにも、今の時代に合った、よりオープンなコミュニケーションの場にしたいという意図が込められています。職場懇談会では、従業員から様々な提案が上がってきますので、基本的にそれら全て実現することを目標とし、経営的な判断が必要なものについては、幹部の会議で丁寧に議論し、実行に移す体制を強化しています。 

さらに、改善提案制度にも大きな変更を施しました。 これまでは、良い提案を出した人には報奨金が出ていましたが、その提案に対応する人、例えばエンジニアのような裏方に回る人には何もありませんでした。そのため、提案があがってきても、対応する側にとっては仕事が増えるばかりで、後回しにされてしまうという課題があったのです。 

この課題を解決するため、提案者だけでなく、その提案を実現するために動いた対応者にも報奨金を支給する制度を2022年頃から導入しました。 この制度によって、提案した人も、それを実行した人も、双方に報いがある形となり、『言えばやってくれる』という現場の信頼感が格段に向上しました。かつては『言ってもどうせ無理だろう』という雰囲気が少なからずあったのですが、今では『自分たちでも何かやってみよう』という自発的な気持ちが湧き上がるようになっています。この変化は、小集団活動のような改善活動の活性化にもつながり、新たな良い取り組みが自然発生的に生まれる流れができています。 

もう一つの大きな改革は、社長や部長クラスが定期的に行う現場巡視のスタイル変更です。 以前の現場巡視は、できていない点を指摘する形が主でした。例えば『ゴミが落ちている』とか『ここが片付いていない』といった指摘です。これでは、巡視する側も面白くありませんし、現場も前日から片付けに追われるなど、ポジティブな場ではありませんでした。 

そこで、この指摘型の巡視を廃止し、『聞きに行く』巡視へと転換しました。 管理職だけではなく、現場の核となるメンバーにも、『こんな良いことをやりました』とアピールしてもらったり、『こんなことに困っています』と率直に言ってもらったりするようにしたのです。その場で『じゃあ、それをやろう』と即座に判断したり、『それはいいね』と称賛したりするなど、その場で判断・解決することを徹底しています。 

この変化により、現場の従業員は『こんなことを言ってもいいのかな』といった遠慮なく、言いたいことを言えるようになり、より風通しの良い組織づくりが進んでいます」 

こうした組織風土改革の推進における重要なツールとして、Unipos※も活用しています。 

※ピアボーナス®を軸とする、全社参加型カルチャープラットフォーム 

長谷川氏:「Uniposは働きがいを向上させる施策として理想的な取り組みの一つであると捉えています。 

メルコアドバンストデバイスでは、モノづくりの基盤となる『現場力』向上のために先ほどお話したような様々な取り組みを実施しており、特に現場の発信力向上に力を入れてきました。まさにUniposは自分から発信していくツールであり、その発信内容は当事者間だけでなく広く全体に共有されます。オープンに見える化されることで当事者同士だけでなく会社全体から感謝・称賛されることで、従業員のやりがいや達成感が増幅し、『働きがい』向上に繋がっていくのです」 

社外の「つながり」を強化し、働きがいを高める 

同社の組織風土改革は、社内に留まりません。長谷川氏は、工場内に閉じた環境だけでは、従業員の「やりがい」を最大限に引き出すことが難しいと考え、外部との連携強化にも力を入れています。 

特に力を入れているのが、三菱電機グループ内の関係会社間での連携強化です。 

長谷川氏:「コロナ禍を経て2022年頃から、関係会社の社長同士が集まる『関係会社交流会』を始めました。これに加え、製造や技術など部門ごとの個別交流会も定着しています。弊社が関わる半導体事業の関係会社は、競争関係がほとんどありません。そのため、良い事例があれば、『これはいいですね、うちでもやりたい』と積極的に共有し、水平展開する流れができています。黙っておこうという考えは一切ありません。非常に良い関係性が築けていると実感しています。 

こうして育まれた関係性によって、出向などの人財交流もスムーズに行えるようになってきました。この関係会社との連携強化には、関係会社の垣根を超えて導入しているUniposも一役買ってくれていますね」 

また、三菱電機グループ内の関係会社以外の「外とのつながり」の強化も同時に進めています。 

長谷川氏:「社内に閉じた環境にいると、どうしても外との関係性が生まれにくく、受け身的なポジションになりがちです。仕事の『やりがい』は、外との関係性を通じて、自分がやっている仕事が社会でどんな役割を担っているのか、他者と比べてどうなのかといった、自分たちのポジションを理解することで生まれると考えています。そのため、弊社では、特に技術部門や管理部門のメンバーに対して、外との繋がりを積極的に作ることを推進しています。 

具体的には、展示会やセミナーへの参加、地域の官公庁・学校の方々との交流を支援しています。これにより、自分たちの仕事の価値や社会貢献度を再認識し、より大きなやりがいを感じられるようになると期待しています」 

組織風土改革がもたらした着実な変化。鍵は「現場の発信力」 

長谷川氏が推進する一連の組織風土改革は、定量的・定性的に明確な変化をもたらしています。 

長谷川氏:「2024年度の従業員意識サーベイでは、5つの重要指標全てにおいて大幅な改善が見られました。特に、『エンゲージメント』と、課題であった『成長機会』のポイントが大きく伸び、各施策の効果が明確に表れたと考えています。これは、私たちが目指す『働きやすさ』と『働きがい』を両立させる『プラチナ企業』への着実な進捗を示しています」 

 長谷川氏:「定量的な結果に加え、現場では「言えばやってくれる」という信頼感が醸成され、従業員一人ひとりから「自分たちでも何かやろう」という自発的な気持ちが湧き出ています。その結果、小集団活動や改善活動が以前にも増して活性化し、現場のやりがいや会社活動への参画意識の向上に繋がっています。 関係会社との連携強化によっても、人の交流がスムーズに行われるようになるなど、目に見える変化をもたらしています」 

長谷川氏は、組織づくりを進める上で特に意識したこととして、「従業員の発信力を高めること」を挙げます。  

長谷川氏:「弊社の従業員は非常に謙虚で、自分の仕事に真面目に取り組む一方で、自分からの発信を遠慮しがちな印象がありました。しかし、改革には相互理解に基づいた連携が不可欠であり、そのためには自分や自部門の考えをわかりやすく発信し、伝えることが重要です。『どうせ言ってもやってくれない』という意識を排除するため、発信してくれた意見には必ず迅速かつ誠実にレスポンスすることで、発信しやすい風土を醸成しました。称賛や表彰の機会を増やすことも、この改革を後押ししています」 

さらなる「働きがい」を追求し、持続的な成長を続ける企業へ 

単なるツールの導入や制度の変更に留まらず、従業員一人ひとりの声に耳を傾け、自発性とエンゲージメントを引き出すアプローチで、組織風土改革を実践してきた、メルコアドバンストデバイス株式会社。最後に今後の展望を伺いました。 

長谷川氏:「これからも最先端半導体製品の製造を通じてグローバルな視点を持ちつつ、産官学連携や地域貢献、そして人財採用の推進により、会社のプレゼンスをさらに向上させ、持続的に成長し続ける企業を目指したいと考えています。 

部門間連携を強化するため、デジタルツールの活用をさらに進め、情報共有と意見交換の場を広げていく方針です。 

また、社内報などを通じて、従業員だけでなく、そのご家族や親御さまにも会社活動を発信し、理解を深めてもらうことで、さらなる従業員エンゲージメントの向上を図る計画も持ち合わせています。 

そして、将来を見据えて、若手採用や女性活躍推進、年齢構成の最適化、専門性の強化などといった従業員の構成バランスを測りながら、多様な視点での組織づくり、伝承、働き方改革を進め、従業員一人一人の成長やキャリアアップを企業価値向上に繋げていきたいですね」 

※記載されている情報はインタビュー当時のものです。

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